爆笑注意。町田康が日本神話の「ヤマタノオロチ退治」を語り直したら…『口訳 古事記』が話題!
町田康が日本最古の神話「古事記」を、今の言葉で語り直した『口訳 古事記』が話題です。アナーキーでクレイジーな神々が活躍する本書より、ご存じスサノオの「ヤマタノオロチ退治」の物語をお届けします。乱暴狼藉のあまり、天から追放されて地に降り立ったスサノオは……。
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そんなことで、いやがられ、出て行けと言われた須佐之男命(スサノオノミコト)は高天原を出て、出雲国の、肥河(ひのかわ)という川の上流、地名で言うと鳥髪(とりかみ)というところに降ってきた。
須佐之男命は、
「いやあ、川だなあ。川があるとどうしても、この、川の流れというものを見つめてしまうな。なぜだろうな」
と言って川の流れを見つめた。暫く見つめて須佐之男命は言った。
「別にただ水が流れているだけだ。もう見るのをやめようかな。いや、でももう少しだけ見ようかな」
そう言って須佐之男命がなおも川を見つめていると川上から箸のようなものが流れてきた。
「お、なんだ」
と言って須佐之男命は右手をニュウと伸ばしてこれをすくい上げた。
やはり箸であった。
「ううむ。箸か。ってことは。この川上に人が住んでいるということだな。おもろ。行って笑かしたろかな」
そう言って須佐之男命は川上に向かって歩いていった。
そうしたところ言わんこっちゃない、川上に家があって人が住んでいた。
「家、おもろ」
と須佐之男命は思ったが、家の中ではおもろくないことが展開していた。おっさんとおばはんが、間に女の子をはそんで愁嘆に泣いていたのである。
「陰気くさいじゃないですか。汝ら何者ですか」
須佐之男命が問うと、おっさんが答えて言った。
「僕は、此の国の神さん、大山津見神(オオヤマツミノカミ)の子なんです」
「あー、知ってますよ。大山津見神」
「よかったです。で、僕の名前は足名椎(アシナヅチ)ちいます。これは私の妻で手名椎(テナヅチ)、へてからに此処におりますのが娘でございまして、櫛名田比売(クシナダヒメ)ちいます」
「あー、そう」
「そうなんです」
「わかりました。わかってよかったです」