横尾忠則さん、日本芸術院の新会員に 「一瞬戸惑い」も、なお創作に強い意欲「これからが本番」
横尾さんは1956~59年にデザイナーとして神戸新聞社に勤務し、60年代から独自のイラストレーションを主体とするポスターデザインで注目された。69年「第6回パリ青年ビエンナーレ展版画部門グランプリ」をはじめ国内外で数々の賞を受賞。現在、創作の主題として「寒山拾得(かんざんじっとく)」の作品群があり、新たな境地を開いている。
日本芸術院は今月、横尾さんら9人を新会員の候補者として決め、文部科学大臣に上申。横尾さんは第一部(美術)第五分科(建築・デザイン)の分野で選ばれた。
横尾さんを推薦した理由として「油絵作品を含め劇的かつ物語性を内包する視覚表現はデザイン、アートの領域を超えて一般市民の広く支持する作家の存在を形成した」「著作も多く、後進への影響力は計り知れない」などとしている。
横尾さんが選出に際し、神戸新聞の求めに応じて寄せてくれたコメントの主要部分は以下の通り。
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「正直言って、考えもしていませんでした。自分とは無縁の存在だと思っていましたので、一瞬戸惑いました。
デザインの部門での会員ということしか聞いていません。美術部門では洋画というセクションがありますが、私は洋画ではなく現代美術なので、43年前のデザインを評価されたとしてもピンときません。あまりにも時間が経ち過ぎています。
私が美術家に転向してすでに43年になります。現在、美術はアンディ・ウォーホル以降、何人ものデザイナーが美術に転向しています。そして美術そのものがデザイン色を帯びてきています。そういう意味では私の美術作品も同じかと思います。
ですから、洋画部門ではなくデザイン部門に加えられたことは納得がいきます。
あのマルセル・デュシャンさえ、自分のやっていることは生活に即したデザインと言えるとも言っています。
今後の創作活動のために残された時間はそう長くないと思いますが、創造と生活が完全に一元化されていますので、全ての時間を創作に向けたいと思っています。
主題も様式からも自由でいたいと思っていますので、何が表れるかは全く未知です。
これからが本番です」