土方久功と柚木沙弥郎。両者の創作の世界に迫る二人展が開催。
1900年に東京に生まれ、24年に現在の東京藝術大学の前身である東京美術学校の彫刻科を卒業した土方。ミクロネシアの人々の生活文化に興味を抱き、29年に当時日本の委任統治領だったパラオ諸島へ移り住んだ。以後42年までミクロネシアの島々で生活をし作品制作をしながら、現地に住む人々の生活様式や儀礼、神話などの調査も積極的に行った。
帰国後は島の人々や風景をテーマにした木彫レリーフ、ブロンズ彫刻、水彩画を数多く制作し、現地での調査をまとめた著書や詩集、絵本も出版した。
展覧会では土方の作品を3つのセクションに分けて展示。「ブロンズ彫刻とマスク」のエリアでは館所蔵のものを中心に、マスク作品とブロンズ彫刻をそれぞれ約10点ずつ見せる。続く「木彫レリーフと水彩画」ではミクロネシアの自然や人々を描いた木彫レリーフ約15点と、病を患ってから描き始めた水彩画約10点を展示。そして「絵本の仕事と雑誌『母の友』挿絵原画」のセクションでは、福音館書店刊行の雑誌『母の友』のために描かれた挿絵原画が初公開される。
柚木は1922年東京生まれ。東京帝国大学文学部美学美術史科への入学、その後の学徒動員を経て、戦後に岡山県倉敷市の〈大原美術館〉で働き始める。その頃、柳宗悦の「民藝」思想や芹沢銈介の型染カレンダーに強い影響を受け、47年に芹沢銈介に弟子入り。染色の道を歩み始める。以後80年近くにわたり制作活動を続け、染色作品だけでなくガラス絵、版画、立体作品、絵本など多岐にわたる表現方法で創作を行っている。2014年にはパリで個展を行うなど、海外からも評価を集めている。