〈新素材研究所〉の素材の秘密を解き明かす新刊書籍『素材考』とは?
「旧素材こそもっとも新しい」をコンセプトに、日本古来の素材や伝統的な建築技法を取り入れる姿勢が業界内でも際立つ存在だからこそ、その仕事を解剖するのに素材そのものを知ることは欠かせない。大きく4章仕立てになっている本書は、さらに細かく素材ごとにまとめられている。そこには「屋久杉」「根府川石・小松石」「大谷石」など〈新素研〉ではおなじみの自然素材のほか、通常の現代建築ではまず使われないが〈新素研〉が好んで取り入れる「銘石古材」や「廃材」、あるいは同所が考案したオリジナルプロダクトとも言える「縦桟障子」「箒垣」などの項目も並んでいる。
たとえば樹齢1000年を超える「屋久杉」は新規の伐採が禁じられており、倒木などでわずかに出回るだけの貴重な材だが、うねるような杢目は何ものにも替えがたいと〈新素研〉は内装に積極的に取り入れる。挽き板にした2枚の屋久杉を継ぎ合わせて〈MOA美術館〉の展示台にし、短い寸法の半端材をニューヨークの高層コンドミニアムのフローリングに使う。一般的な建築設計事務所なら、コストや手間の観点からまず敬遠するこのような素材を、なぜ〈新素研〉はあえて取り入れ、その活かし方に腐心するのか。その背景にある思考も明らかにされる。