居酒屋で子供食堂、店主は「支援者の思い背負っている」 埼玉・和光で開設から1年
居酒屋は「賞味期限180秒! 究極の鶏レバー串がある店 浩治朗」。店主の大久保浩治さん(47)は昨年2月、自身が経営する居酒屋の一角を、午後4時半~6時に子供食堂として運用を開始した。
◆1食200円、原価で提供
新型コロナウイルス禍の中で、県の感染防止対策協力金のほか、地域の人に支えられながら営業を続けていたが「何のために働いているのか」と自問し、「社会に貢献したい」という思いを形にした。
1食200円の原価でご飯や鶏の唐揚げ、生卵などを提供する。原資は支援者からの寄付。寄付に見合う数のリボンを店頭に置き、これを子供らが使って、食事を受け取る仕組みだ。
子供食堂は毎日開設しているが、開設から1カ月は利用者はなく、支援者もいなかった。昨年3月にインターネット上の地域情報に掲載されてから利用者や支援者が現れ始めた。ネット情報を見て初めて店を訪れる人が支援者になるケースが多かったという。「年配の方を中心に5千円、1万円と支援してくださる方が大勢いた」と明かす。農家からは、コメや規格外で流通しない野菜などの支援もあったという。
◆母を亡くした経験も開設理由
「世に何らかの貢献をしたい人はたくさんいて、そういう人たちが子供食堂をやっていると知って、店に来てくれた。日本のすばらしさを実感した」
大久保さんは中2の時に母親を乳がんで亡くしたが、近所の人が代わる代わる食事の世話をしてくれた。そんな経験も、子供食堂開設の理由の一つという。
当初は子供食堂の利用者を「困っている家庭の子だけにしよう」と考えていたが、実際は共働き家庭で夕飯の支度が大変なときなどに訪れる人も多い。「困っている子だけにすると、うちの店に来ることで指をさされる可能性もある。みんなが来ることで、本当に困っている子も来やすくなれば」と話す。
◆「お祭りみたい」
市内の小西遼和さん(10)と穂佳さん(6)兄妹は、母の聡子さん(36)とよく利用している。遼和さんは「ここに来るとお祭りみたい」と笑う。聡子さんは「アットホームな雰囲気で気兼ねせずに、気付いたらたくさん利用していた」と話した。
大久保さんは「子供たちと、支援してくれる農家の手伝いに行くなど、子供食堂をハブにして地域のつながりを強くできれば」と今後の展望を描いている。(兼松康)