「これマジで新人の作品?」…マンガ家の喜国雅彦氏が脱帽した「冒険ファンタジー」その驚きの中身
そんな惹句を目にしたところで、読書を趣味とする多くの大人の方々は、「ああ、児童書ね」とばかり、自分とは無縁のものとお感じになり、手にすることもしないだろう。
ある日、編集さんが一冊の本を置いていった。「おもしろいので、よろしければ読んでみてください」と。
東曜太郎著『カトリと眠れる石の街』(講談社)がその本。帯に「第62回 講談社児童文学新人賞佳作受賞」とある。新人作家さんのデビュー作。内容はタイトルから推察するに、ファンタジーっぽい。だとすれば、僕が一番疎いジャンルだ。
いつもなら頂き物の単行本は、仕事場の「そのうち」棚に置かれ、次に手に取るのはいつのことやら──な流れになるのだが(毎月多量の献本をいただくので、如何ともしがたいのです)、惹句にある「受賞うんぬん」が、棚へ並べようとした僕の手を止めた。
講談社児童文学新人賞。そういう名前の公募の賞があることは、なんとなく知ってはいたが、引っかかったのはその回数だ。
第62回。
ちょっと待って。もしこれが年に一度の賞であるならば、62年間も続いていることになる。だとしたら、ちょっとすごい。いや、かなりすごい。ウェブで調べたら、まさしくそうだった。創設されたのは1960年。今年で63年も続く、由緒正しい新人賞だった。
過去の受賞者リストをみる。第1回(1960年)の受賞者が松谷みよ子さんと山中恒さん(佳作)でいきなり仰天。そして第2回(1961年)には立原えりかさん。
児童文学に詳しくない僕でも知ってる国民作家が続いたかと思えば、第5回(1965年)の佳作には、ミステリ&幻想文学界のレジェンドにして現役作家の皆川博子さんもいらっしゃるではないですか!
その途端に、急に読みたくなってしまうゲンキンな僕。「疎いジャンルだ」なんて言いつつ、実は読むべき理由(順番抜かしの言い訳)を探している。それが読書好きの性(さが)なのだ。