芸術渦まく9月 平田オリザさん「豊岡演劇祭」、91団体が公演
◇バイオリニスト、庄司紗矢香さんも
主催は豊岡市、養父市、県などでつくる実行委員会。新型コロナウイルス禍で20年は規模縮小、21年は中止になった。22年の参加77団体から23年はさらに増え、フェスティバルディレクターの劇作家、平田オリザさんは6月22日の記者会見で「実質3回目で名実ともに国内最大級の演劇祭に育ってきた」と手応えを語った。
公式プログラムのうちディレクター選定は13演目。城崎温泉(豊岡市)にある城崎国際アートセンターの芸術監督で、劇作家の市原佐都子さん作・演出の「弱法師(よろぼし)」は6~7月の世界演劇祭(ドイツ)で初演された作品。文楽の形式を使った人形を通じて人間を考える。欧州を拠点に活躍するバイオリニスト、庄司紗矢香さんと平田オリザさんが試みる「音楽と言葉の旅『ふるさと』」、芸術文化観光専門職大学(豊岡市)とフランスのリヨン国立舞台芸術技術学校の日仏学生による「私はかもめ」、作家の柳美里さんの原作を舞台化した「窓の外の結婚式」、俳優の平田満さんと井上加奈子さんのアル☆カンパニーによる「POPPY!!!」などがある。
さまざまな家族の姿を見せる演目も目を引く。交錯する家族の思いを広島弁で表現する福名理穂さん作・演出の「柔らかく搖(ゆ)れる」、小さな会社を大企業に成長させた一家と親族、友人たちの物語を届ける「KOTATSU」、認知症や介護施設から逃げてくるお年寄りが集まる馬留家を舞台にした「馬留徳三郎の一日」がある。
「地域」「観光」と演劇を結び付けた公式プログラムも引き続き企画された。豊岡市の市町合併を描いた市民参加型の「豊岡かよっ!」、地域の民話と神楽を融合して子どもらが農村歌舞伎舞台で演じる「但東さいさい」、1929年生まれの俳優、坂本長利さんが豊岡市出石町の宗鏡寺(すきょうじ)(沢庵寺(たくあんでら))で上演する独演劇「土佐源氏」をはじめ、JR西日本の観光列車「うみやまむずび」での観劇体験、城崎温泉の旅館や飲食店で俳優による文学作品のリーディングもある。
自主参加プログラム(フリンジ)は参加73団体。
豊岡演劇祭2023のプログラムについて、平田オリザさんは演劇祭のテーマ「うずまく、まくあけ。」のように「広い開催エリアを回遊して、演劇が渦まくようなイメージになるようにした」と説明。「海外からの作品、海外との共同作品を増やす最初の年。国際的な演劇祭への第一歩を踏み出せたと思う」と位置づけた。
チケット販売中。取り扱いは豊岡市大手町1の29のフェスティバルセンター(0796・34・9525)と豊岡演劇祭2023のサイト(https://toyooka-theaterfestival.jp)。