“にしおかすみこ”が明かす『ポンコツ一家』を読んだ母親の「激怒」と父の「意外なメール」
―認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父、一発屋の自分……四人の家族生活が赤裸々に綴られています。ご家族のことを書こうと思った理由は何だったのでしょう。
理由は四つあります。一つ目はコロナ禍で仕事がゼロになってしまったので、生活費を稼ぎたかったから。また書くことが好きなので、好きなことを仕事にしたかった。三つ目は家族と生活しながら、家でパソコン一つでできる仕事だったから。最後は、自分の家族の話をたくさんの人に読んでもらい、笑ったり、ほっとしたりしてもらいたかったからです。
―話は'20年6月から始まります。コロナ禍で1年ぶりに実家に帰るとお母さんの様子がおかしく、家がごみ屋敷状態になっていた。これは大変だと実家に戻って生活することに決めたそうですが、帰ることに迷いはなかったのですか。
その頃、とにかく収入も貯金もなかったので、それまで借りていたマンションの家賃が払えず引っ越しを余儀なくされていました。切迫した状況の中、実家に戻るか、別のマンションに移るかを考え、実家を選びました。「家族の面倒は自分が見る!」といった、大それた考えがあったわけではないんです。
―様子のおかしいお母さんを病院に連れていった結果、認知症と診断されたそうですね。お母さんはショックから「セーフって言ったじゃないか! 騙しやがって!」と荒れていましたが、にしおかさんご自身はどんな心情でしたか。
病院に連れていった時点で「認知症かなあ」と思っていたので、「やっぱり」という気持ちでした。正直切なかったですね。今後の介護保険の認定のことも考えてハッキリさせたほうがいいと思ったのですが、母をあのタイミングで病院に連れていったのが良かったのか、時々考えてしまいます。母に認知症だと自覚させてしまったかな。いや、そんなヤワではやっていけないぞとか、気持ちがいったりきたりです。
―「父はサラリーマンだった。定年まで一生懸命働いてくれた」など、さりげない言葉にご両親への尊敬の念が窺えます。どんなご家庭だったのでしょう。
父は、給料を酒代に使い、わが道を行く人だったので、一家の大黒柱は母で、働きながら姉と私を育ててくれました。母はいつも家族のことを考えて、まとめようとしてくれますが、他の家族三人は結構ばらばらで、それぞれ別の方向を向いている。でも姉に何か困ったことが起きると、皆で一致団結する……という家族でした。