長坂常のスキーマ建築計画が設計したイソップ吉祥寺店がオープン。古材を採用し、解体住宅を再解釈
イソップの日本一号店であり、2010年にオープンした青山店の設計も手掛けたスキーマ建築計画。当時は審美性と感覚に訴える質感を理由に古材を採用したが、今回の吉祥寺店も環境への影響を最小限に抑え、近隣住民の歴史の面影を残したいという思いから、同様の素材が選ばれたという。
長坂は、吉祥寺店の設計にあたりその半径5キロメートル以内に取り壊しが予定されている家屋を探していた。ある女性から条件に合う知らせが入り、高齢の両親が築60年の木造家屋の取壊しと建替えを決めたということで、場所は吉祥寺店から2.7キロメートル、引き取れる良質な部材もあったという。
そして、イソップとスキーマ建築計画のメンバー、さらに明治大学で建築を学ぶ学生たちで構成されたチームが現地に赴き、建物の梁や柱などを丁寧に救出。人力車のような荷車に資材を積み込み、さながら祭り行列のように吉祥寺の住宅街や公園を練り歩きながら、イソップの店舗予定地まで運んだ。また、それ以上の資材輸送が発生するのを避けるため、その後の木材加工や製作はすべて店舗のなかで行われたという。
本店のデザインは、解体住宅を遊び心いっぱいに再解釈したもの。千鳥状に配列した棚が店内全体に複数の通路やアルコーブをつくり出し、加工を施していない梁と柱を縦に二等分することで、一方の面は年月の重みをそのまま残し、もう一方の面は新しさの感じられる姿に仕立てた。対照的なテクスチャーが、棚の構成において並列に配置され、規則正しく並んだアンバーボトルの隊列と対話をしているような構造をなしている。さらに、赤い漆で仕上げられたカウンター、引き出し、シンクは、防水性および視覚的なバランスをまとめている。
店の奥には、フレグランスの数々を探索できるフレグランス
ライブラリーを設置。スキンケア、ヘアケア、ボディケア、ホーム用品などを試すことができる個別のシンクや、休みながら店舗の居心地を堪能できるベンチも揃えられている。
なお本店のオープンを記念し、奄美大島に伝わる泥染めで染色したコットンバッグも期間・数量限定でプレゼントされている。