【独占】ブルース・ウェーバーが“買える“写真展に込めた思いとは?
──2005年に開催された映画『トゥルーへの手紙』の公開に合わせたエキシビションでの来日から随分と時が経ちました。今回はそれ以来のエキシビションとなりますが、何か東京で思い出深い体験はありましたか?
ブルース・ウェーバー あの時(2005年の来日時)は、東京に着いてすぐにエキシビションのオープニングを迎えたんです。日本側のチームと長い時間をかけて準備をしたんだけど、「みんな映画を気に入ってくれるかな?」、「エキシビションもどうだろう?」とちょっとナーバスにもなっていて。
どんなに真剣に仕事に取り組んだとしても、それが人に受け入れられてもらえるかはわからないものだし、特にそれが外国であれば尚更ですよね。
オープニングの日の朝、私は会場へと歩いて向かっていたんだけど、そのときに見た光景は信じられないものだった。私が撮った犬の写真の巨大な看板の元、人々が向こう側の道の角を超えて並んでいたんです。それは日本の皆さんが私たちを気に入ってくれたという素晴らしい兆しでしたから。
あの旅で出会った人や一緒に働いた仲間たちの親切さを私はこれからも決して忘れないと思う。そして今回のエキシビションのこともまた、日本のみなさんが気に入ってくれればと願っています。
──このエキシビションのタイトルを『Those Halcyon Days』と名付けた理由と意味がありましたら教えてください。
ブルース・ウェーバー 「Halcyon」とは英語で、過去における理想的な幸福、平和のことを意味します。今回展示している写真たちというのは、僕がペンシルバニア州の保守的な小さな街で少年時代を過ごしていた頃に、「将来こうなったらいいな」と夢見ていたものが、現実となった日々を写しだしているものなんです。
大学を出て、ニューヨークに初めて訪れたとき、友人が私をバーへと連れていってくれたんです。その場所には考える限りのあらゆる人たちがいた。黒人、白人、アジア人、女性に男性、ゲイにストレート。それらが一緒になって『Use To Be My Gril』という曲に合わせて踊っていました。
そこに、まるで50年代のサーフィン映画から抜け出してきたようなブロンドの男性が僕の方へとやってきて、「一緒に踊るかい?」と言ってきた。心臓が止まったような気がして、うろたえながら「えっと、無理だよ、僕は踊れない」と答えると「大丈夫、どうやるか見せるから!」と彼は言い、気付くと私はダンスフロアーの真ん中で50人の知らない人たちの中に入っていたんです。
あの晩に感じたみんなとの喜びや、繋がり。それこそが私が自分の仕事を通じて作り上げたいと思ってきたこと。そしてそれこそが皆さんが〈ISETAN THE SPACE〉でのエキシビションに訪れた時に感じてもらいたいものですね。