深刻すぎる部活の指導者不足 ICTで遠隔指導は可能か
実証実験は、スポーツ庁のスポーツ参加推進事業の一環で行われた。近年は子供たちのスポーツの参加機会の減少や、地方における部活の指導者の負担などが課題となっている。NTT東が有する強豪スポーツチームとデジタル技術を活用し、学校スポーツの環境整備に取り組む目的で始まった。
11月24日に行われた報道陣向けの説明会では、東京都調布市にある同社の体育館と北海道の中学校をオンラインでつなぎ、バドミントンと野球の遠隔指導を行った。
バドミントンは、北海道登別市の登別中学バドミントン部の生徒を対象に行われ、桃田がシャトルの打ち分け方を手本で見せた後、生徒が同じように実施。一人一人の動きを画面で確認した桃田は、「シャトルの落下地点に早く入ること」「フォームをコンパクトに打った方がいい」などと個別にアドバイスを送った。生徒たちは、五輪選手の助言に「プロの方に教わるのはめったにない。部活でも大会でもアドバイスを生かして使っていきたい」と喜んだ。
部活動をめぐっては、競技経験のない教員が指導しなければならないケースや、教員の長時間労働の一因にもなっている。休日の部活動の指導を地域のスポーツクラブや民間事業者に委ねる「地域移行」も具体化してきており、登別市の堀井貴之教育部長は、「トップアスリートに教わる機会は、子供たちにとって励みになる。部活の地域移行の面でも、この取り組みは新しい可能性がある」と意義を語った。
一方で、遠隔指導には課題もある。桃田は、「直接、羽根を(一緒に)打てるわけではないので、細かく言葉にして伝えないといけない」と難しさを語る。
同社では、遠隔指導のほかに、指導者が手本の動画を配信し、生徒が実践した動画に指導者がコメントする仕組みも用意している。同社は「多面的に行うことで、価値を見いだしていきたい」。23年の事業化を目指し、理想の形を探っていく。(運動部 久保まりな)