動画クリエイター展 格差超え、個別最適な「学び」届ける 佐藤昌宏氏
EdTechは、英語で「教育」と「技術」を組み合わせた造語で、デジタル技術の劇的な進化を背景に既存の教育や学び方を改革。実際、平成29年から政府の「未来投資戦略」でも言及され、民間と学校の教育の垣根を越えた学習環境づくりに寄与している。
佐藤教授は、21年頃からEdTechの研究や実践に取り組んできた。「推進している理由は、いつでもどこでも誰でも、質の高い教育が享受できるようにするためです。現状、小中高の不登校が30万人に迫り、地域格差の問題もある。教育を届ける仕組みとして、ICTが必要になっている」と説明する。
そのなかで、学習者から自主的に、動画を使った学びが出始めているという。「例えば、自分が勉強している姿を流し続けるYouTubeが人気で、視聴回数が数百万に達している動画もある。これは、自分にプレッシャーをかけながら自身のモチベーションを上げたり、書き込みによる承認効果も得られたりするから。視聴者側にはまねをするミラー効果もある。つまり、モチベーションコントロールにYouTubeが使われている」
それに伴い、ベンチャー企業にも動きが出ている。経済産業省が行う「次代のEdTechイノベーター支援プログラム」に採択されたヘラズィカ(横浜市)はオンライン自習室を運営。小学生がお互い勉強する姿を写し合い、自習室のような集中空間を自宅で再現できるようになっている。
「つまり、人間と動画を使った、リアルとオンラインのハイブリッド型です。このような教育系ベンチャーが地方からも多く登場しており、学び方に変化をもたらしています」
新しい潮流として捉えるなか、課題もある。「危険だから萎縮して使わなくなるケースが教育現場によくある。でもそれはICTを学ぶ機会を奪うことになる。制限するより、利便性を伝え、身につける教育をしていくことが重要。幸せになるための技術や知識がリテラシーであり、危険を回避することだけがリテラシーではない」
既存の「教育」を超え、個別最適な「学び」が手に入れられる時代になったという。「教育の主語は学校や先生だが、技術を手にした子供たちは、一人一人に合ったカリキュラムで主体的に学ぶようになる。動画には、やる気が出ない子供でも、火が付く可能性がある。そうなると学習者が主役になり、教育を超えた学びが手に入るだろう」
(堀口葉子)