鈴木由美 「鎌倉殿の13人」ロスの方々に捧ぐ、北条氏をめぐるブックガイド
(『中央公論』2023年2月号より)
2022年のNHK大河ドラマは三谷幸喜脚本の「鎌倉殿の13人」、主人公は鎌倉幕府の第2代執権(将軍の後見役)を務めた北条義時であった。
本作では、義時(小栗旬)はもちろんのこと、強大ゆえに源頼朝の命で殺害された上総広常〔かずさひろつね〕(佐藤浩市)、悪人のイメージが強かった梶原景時(中村獅童)、単純で人が好い和田義盛(横田栄司)など、俳優たちの名演が際立っていた。戦国大名や幕末志士と比べると知名度の低い「御家人」たちにスポットライトをあてた意義は大きいといえる。
大河ドラマで鎌倉幕府や北条氏が取り上げられるのは、2001年の「北条時宗」や2005年の「義経」の後しばらくなかったこと、そして人気脚本家による作品という話題性もあってか、関連書籍も多数出版された。これらの関連書籍の内容は、当然だが主人公の義時はじめ「鎌倉殿の13人」で取り上げられた時代・人物に関するものがほとんどを占めたように思う。
しかし「鎌倉殿の13人」が描いた時代の後、つまり義時が没した後に、ドラマにも登場した北条時房(義時の弟)や泰時(義時の長男、第3代執権)、朝時〔ともとき〕(義時の次男)など、個性的な面々の揃っていた北条一族がどうなったのか、気になる方もいるのではないだろうか。本稿では、義時没後の北条氏、そして義時たちが築いた鎌倉幕府の〝その後〟を知るための書籍を紹介してみたい。
なお、今回紹介する書籍は、現在も新刊で入手可能な図書のうちから、一般向けのものを中心に選んだ。著者の敬称と書籍の副題は省略したことをお断りしておく。