サンローラン永遠の女神、ベティ・カトルーに迫る 東京・天王洲で展覧会
20世紀モード界に君臨したデザイナー、イヴ・サンローラン(1936~2008年)にインスピレーションを与え続けた永遠の女神、ベティ・カトルー(1945~)に焦点を当てた展覧会「BETTY CATROUX-YVES SAINT LAURENT 唯一無二の女性展」が12月11日まで、東京・天王洲の寺田倉庫B&C HALL/E HALLで開催されている。
唯一無二の片割れ
イヴが、モデルのベティと出会ったのは1967年。ベティのプラチナブロンドの髪、183センチの長身、スレンダーで両性具有的な姿をナイトクラブで見かけたイヴは、ほぼ〝一目ぼれ〟だったという。さらに彼女の自由奔放でミステリアス、反骨精神あふれる気質も相まって、2人は意気投合。イヴは既に62年に自身のクチュールメゾンをピエール・ベルジェ(1930~2017年)と共同で設立、革新的なスタイルを次々に発表していたが、ベティという〝ソウルメイト〟を得てクリエイションはさらに進化した。
女性の社会進出が進み、生き方や価値観が変わりつつある中、イヴはベティを通して新しい女性像を描いた。展覧会の導入部を飾るのは、ベティとイヴの厚い友情を物語るプライベートな写真群、手紙、資料など。彼女がイヴの「唯一無二の片割れ」と称される理由がわかるだろう。
素肌にタキシード
具体的に彼女は「イヴ・サンローラン」にどんな影響を与えたのだろうか。象徴的なのが、パンツスタイルやタキシード、レザージャケットなどだろう。今では当たり前のファッションだが、イヴがメンズアイテムを女性らしくエレガントに転換し、世にセンセーションを巻き起こした背景には、間違いなくベティの存在があった。胸元を大きく開け、素肌にタキシードを羽織るベティはたまらなくセクシーだ。サファリジャケット&ニーハイブーツのルックも、長い手足を持つ彼女の美しさを際立たせている。
会場には、プラチナブロンド&サングラスというベティをイメージしたマネキンたちがずらりと並び、貴重なコレクションピースをまとっている。その多くがもともとベティの私物で、3年前にピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団に寄贈されたものという。彼女が愛したモノトーンのコーディネート、マニッシュだが女性らしさも失わないパンツスタイル…。自らの道を切りひらく、意志のある女性像が立ち上がってくる。
メゾン体現する存在
サンローランの現クリエイティブ・ディレクターで、本展監修を務めたアンソニー・ヴァカレロもまた、ベティというメゾンを体現するミューズから、多大な影響を受けているという。
アンソニーによる近年のコレクションピースを見れば、それは一目瞭然だろう。モノトーンのパンツスタイルも、タキシードもレザーアイテムも、メゾンを貫く普遍的要素を守りつつ、素材やシルエットなど随所に新風を吹き込んでいる。
時代を経て変わるものと、変わらないもの。イヴとベティの友情の物語を通して、サンローランというメゾンの精神に迫る展覧会だ。
入場無料。無休。事前予約制。詳細はサンローランの同展公式ウェブサイト(https://www.ysl.com/ja-jp/displayname-betty-catroux-jp-page)で確認を。
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来年はイヴ・サンローラン展も
また、〝モードの帝王〟のクリエーションの軌跡をたどる「イヴ・サンローラン展」(産経新聞社など主催)が2023年9月20日から12月11日まで、東京・六本木の国立新美術館で開催される。イヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を得て、日本で初めて開かれる回顧展となる。