3Dプリンタで内装をデザイン!? 〈和光〉のコンセプトストア。
立体的なデータをもとに樹脂などを加工し、造形物を作ることができる3Dプリンタ。その存在は近年、新たな表現手法として一般的になってきた。とはいえ造形物のサイズは限られ、建築やインテリアでの活用例はまだ少ない。この技術を大胆に活用した〈WAKO SITE〉は、銀座に本店を構える〈和光〉の新しいコンセプトショップだ。
設計を手がけたのはスイスの設計事務所〈ヘルツォーク&ド・ムーロン〉から独立した建築家、高濱史子。〈WAKO SITE〉は本店のもてなしをそのままにとの思いを込め、コンセプトに「内から外へ/inside-out」と掲げる。高濱はこのコンセプトとともに〈和光〉が本店を構える銀座のランドマーク〈セイコーハウス銀座〉に注目。渡辺仁が設計監督したネオルネッサンス様式のファサードをインテリアに持ち込むこととした。
「どうやってファサードを再現すべきか考えるなか、本物にこだわる〈和光〉ということもあって、ただ外装を模した表現ではなく必然性を持たせたいと考えました。そこで注目したのが高い再現性を持つ3Dプリンタです。今回のパネルの大きさとなると出力できる機種が限られてしまい、現状で最大規模を出力できる機種を使用しました」と、高濱は言う。
誰もが知る名建築のファサードを部分的に切り取り、天然石の壁面を3Dプリンタで再現。パネル化された外壁は細部を調整したものの、寸法や積み方は実際に倣う。窓部分はディスプレイや鏡とし、内照式で壁そのものが和やかに発光する。パネルに近寄ると無数のWで構成されていることに気づくが、これは和光=WAKOの頭文字がモチーフ。意匠としてだけではなく、機能面でも樹脂製パネルの強度を高める役割を担う。
海外メゾンをはじめ、さまざまなラグジュアリーブランドが個性豊かなショップを展開するなかで〈WAKO SITE〉の白くまばゆい空間は目を引く。高濱がデザインしたディスプレイ台に小気味よく並ぶレザーアイテムも、どこか街並みを思わせるようだ。新宿の百貨店内へ銀座の名建築を大胆に持ち込んだ空間は、老舗の新たなる挑戦を軽やかに表現する。
ロングセラーのバッグコレクションを中心に展開する〈和光〉の新しいコンセプトショップ。東京都新宿区西新宿1-5-1 小田急百貨店新宿店1階 インターナショナルブティック。10時~20時30分(日・祝~20時)。