<ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END>六本木で開催中!ヒグチユウコが導くユートピアをレビュー
少女や動物、空想上の生き物たちなど、モチーフは自由自在。ヒグチの頭の中にあるイメージは鉛筆やペンで細密に描かれ、支持体となる和紙に解き放たれていく。「いつも、どこででも絵を描けるように」と、ちいさいサイズの紙を持ち歩き、アトリエでも、出先でも時間を見つけては描いている。その絶え間ない制作が積み重なって、ついには約1500点という展示数となった。
【画像】愛知会場描きおろし作品 《CIRCUS GUSTAVE くんたち大集合》 2020年
エントランスから続く黒い回廊を抜けると、その先には今回の展示の核となる“サーカス”の部屋が出現。ヒグチとぬいぐるみ作家・今井昌代の共著によるビジュアルブック『カカオカー・レーシング』に登場する人形たちが中央の舞台で出迎える。本展のメインビジュアル《終幕》にはここで出合える。
「《終幕》を描き終えて、子供のときの感覚を思い出しました。学生時代や卒業してからすぐの頃など、もっと大きな絵を描いていた時よりも、いまの方がもっと具象でオーソドックスな作品なので、そう感じたのかもしれません。今回の《終幕》では、動画を撮影することもあり、いつもより大きな紙を選んでいます。一度に手を動かして作業できるスペースは少しですが、ミクロの感じで仕上げていくにつれ、まだまだ余白があるような気がして、楽しかったです。まるで自分の未完成な部分をみつけていくようでワクワクしましたね」
他の巡回展にはなかった初の試みとして、《終幕》を描くヒグチの様子を追ったタイムラプス映像を大画面で見られる部屋がある。迷いのない筆致で、ぐんぐんと描き進める気持ちよさを追体験することができる。
「自分も楽しいと思えなかったら、見ている方々も楽しくないと思うんですよね。それは意識しています。でも、どう描くと人に喜ばれるかということを考え始めると邪念になるような気もして。そこのバランスは難しいところです。《終幕》は横長の画角で、下描きはほぼせずに、左から描きすすめていったので、観るのも面白いと思いますよ。カメラを設置して、撤去するまで8日間程度。実質の作業は3~4日間ぐらいでしょうか。個人的には最後に水彩の黒をいれる作業を見て欲しいですね。ぎゅっと絵が締まる感じがするんです」。