「太平記」を歴史絵画で鑑賞 高麗神社で展覧会・埼玉
絵を描いたのは、独協大名誉教授で同市在住の新井孝重さん(73)。荘園経済史などを専門としてきた新井さんは、もともと絵が得意だったといい、令和元年頃から「太平記を分かりやすくするために」と太平記を題材とした絵を描き始めた。
1枚の絵ごとに、「どの場面をどう描くか」という構想に時間をかけ、服飾や武具、建物などの調査をはじめとする時代考証を行いながら描き上げるという作業を繰り返した。
これらの絵36点を、鎌倉幕府滅亡までを描く太平記の序盤部分を口語訳したものとともに「絵本太平記」としてまとめ、昨年6月に出版した。出版記念を兼ねた展覧会が今回、実現する運びとなった。
新井さんは「太平記」の魅力について、「『平家物語』とは趣が異なり、それまでの歴史に現れてこなかった庶民や僧兵などが物語を紡いでいる」と語り、輪郭に墨を用い、色付けには顔料を使い、その様子を鮮やかに描き出した。
今回の展覧会では「絵本太平記」掲載の絵画のうち23点に、新作1点を加えた計24点を展示。「高麗郡小畔川付近」など、県内の様子を描いた絵もある。絵画の大半は縦47センチ、横57センチの大きさ。大きいものでは縦67センチ、横86センチの絵もある。合わせて解説や地図、史料なども展示される。
主催する高麗神社の宮司、高麗文康さん(56)は「中世史は複雑で難しい印象だったが、新井先生の絵を見ていて胸躍る楽しさを感じた」と絶賛。「生き生きとした感じが印象に残ると思うので、ぜひ多くの方に見てほしい」と話している。
21日まで。午前9時~午後4時。会期中は無休。入場無料。問い合わせは高麗神社042・989・1403。(兼松康)