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未来図の先駆者 イラストレーター・真鍋博の足跡たどる一冊出版へ
2022-12-23
未来図の先駆者 イラストレーター・真鍋博の足跡たどる一冊出版へ

 星新一、筒井康隆、小松左京、アガサ・クリスティー、エラリー・クイーン、レイ・ブラッドベリ……。小説だけでなく、雑誌、業界誌、教科書など、さまざまな分野の本を装丁した真鍋博(1932~2000年)の表紙画974点を収めた「真鍋博 本の本」(パイ インターナショナル刊)が28日出版される。生誕90年。印刷物を「主戦場」と思い定めたイラストレーター先駆者の道のりを本でたどることができる。

 愛媛県別子山(べっしやま)村(現新居浜市)生まれの真鍋は多摩美術大で油絵を専攻。卒業後すぐに個展を開くなど洋画で活躍したが、1960年前後から本の装丁、挿絵を手がけるようになった。イラストレーションという言葉もない時代。「しかしぼくはやがて日本にも額縁にはいった絵だけでなく、文章と主従の関係で描く小説の付属物のさしえでもない絵、それが印刷され、量産され、絵そのものの力で見られ、働きかけられるコミュニケーションの分野」が必ずやってくると信じた。そして思い切って油絵をやめ、印刷を知ろうとしたという。(雑誌「高一時代」旺文社 1967年10月号「美術を志したとき美術をやめたとき」より)

 今回の本の編著者、五味俊晶・島根県立美術館学芸員(36)は前任の愛媛県美術館学芸員時代の2020年に回顧展「没後20年 真鍋博2020」を担当した。1964年の東京五輪、70年の大阪万博など、高度経済成長時代と呼応した新たなデザイン、未来図の世界を切り開いた真鍋だが、1冊の書籍をつくりあげるためにさまざまな印刷の可能性を追求したことにも強く興味を持ったという。

 「印刷物こそ最終結果。原画はそのための設計図」と考えた真鍋。同書に収めた当時の書籍担当者へのインタビューからは、「必ず締め切りを守ってくださった。先生は色指定(印刷時の色彩指定)を全部細かくなさいますから、イラストにトレーシングペーパーをかけて、色鉛筆で塗ってそれぞれに何%+何%って色指定をなさる」(元新潮社装幀(そうてい)室・桜井幸子さん)との回想も。

 「印刷という複製技術に対し、真鍋は新たな芸術の可能性を見いだした。忘れてはいけないのは、イラストレーションの芸術性を信じ、一冊の本が未来を変えると信じた時代が少なくともあったという点だ」。五味さんはそう強調する。

 真鍋の長男で、「恐竜博士」として知られる真鍋真・国立科学博物館副館長(63)は「美術館や画廊にふだん来ない人たちにも自分の作品を見ていただくことができるという考えから、父はイラストレーターという仕事を創作のメインフィールドにしていきました。私は恐竜の特別展などを通して、ふだん来館されない方々にも博物館に来ていただけるきっかけを作りたいと日々活動していますが、少し通じるところがあるように感じています」と話している。同書は3520円。【松倉展人】

 ◇真鍋博 57年前のメッセージ

 (同書に再録された「イラスト空間へ発射せよ」(『アイデア別冊 現代のイラストレーション』誠文堂新光社 1965年)から)

 イラストといえば印刷、印刷といえば紙に刷ることと相場がきまっている。だからイラストレーターは「印刷との戦い」という台詞(せりふ)を合言葉に、対印刷を最大の作戦目標におく。ぼくはそれに反対だ。印刷ということは量産に解すべきで、紙に刷るということではない。コンクリートやアクリライトや金属にとあらゆる肌に刷れることのあらゆる可能性がそこで考えられねばならぬ。それも平面だけでなく、凸面や凹面への印刷を考えれば、より有機的な次元の表現が可能だろう。宇宙空間と同じクラ型の面を考えたとすれば、そのスペースは宇宙のように限界はなく、無限のイラストレーションが描けることになる。イラストレーターは印刷への戦いをメディアへの戦いにいまこそおきかえるべきだ。壁面やテキスタイルだけでなく、絵の描ける場所はわれわれの周囲に無限といっていい。

 (中略)

 光や色や動きが加わった今は予想もつかない新しいメディアがこれから次々にわれわれの目の前にあらわれてくるだろう。紙の上の絵とその印刷に終始するかぎり、イラストレーターの未来は都会の郊外の俳句教師以上の場を来たるべき社会にもたぬだろう。印刷との戦いから、メディアへの戦いにいまこそ操縦レバーをきりかえること、そしてその来たるべきメディア空間のためのはげしい遊泳訓練をつづけること、イラストレーターはいまその急務につかねばならぬと思う。その秒読みは始まっているといっていい。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/fb0f973db3419058806d9e03aa8662b2e077e370

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