保存でなく「変化」鑑賞 京都文化博物館、新設の現代美術展示室で
博物館が新たに展示室を設けたのは、テナントの飲食店などが並ぶ1階の一角。土産物店が退去した跡を、現代美術の企画を増やす目的で改装した。広さは約110平方メートル。
初めての展覧会には、美術作家の今村遼佑さん(40)=京都市西京区=と、小宮太郎さん(37)=大津市=を招いた。二人とも日常的な物を用いて制作しており、展示室は一見すると誰かの生活空間のよう。ただ今村さんの作品は繊細な情感をもたらす。
天井からつり下げた古い照明や、床の電気スタンド、壁の蛍光灯がついたり消えたりして雨音のような音が小さく響く。照明具は今村さんがかつて使っていたものや、友人の家のもの。「いろいろな場所にそれぞれ時間軸があり、移っていくのを眺めてみたい」と考えたという。隅に積んだ木の廃材にも、小さな明滅が見える。木材が捨てられていた桜の木の下で木漏れ日を計測し、電子回路とLED電球で再現した光という。
小宮さんは、光がもたらす「見る」という行為を問う。観葉植物は、鑑賞者が近づくと葉の一部が高速で震動するが、一目では分からない。テーブルにある7個の果物のうち6個は、ある運動を繰り返している。目はその動きに奪われるが、残り1個の、静止しているようで時間とともに傷んでいく本物のリンゴが最も変化しているのではないか?――。
今展企画者の1人で、京都芸術センターの安河内宏法・プログラムディレクターは「作品の変化をとどめ、永久に保存する役割を担う博物館で、時間とともに変化していくものを提示する試みになったのでは」と話した。「五劫のすりきれ」とは、途方もなく長い時間のこと。日常とは異なる時空間を想像させる展覧会を目指したという。2階の総合展示とあわせ、入場料は一般500円、大学生400円。京都文化博物館(075・222・0888)。