W杯だけじゃない! アートや建築もビックリのカタールより最新レポート。
日本で実現しなかったザハ・ハディド設計のスタジアムが会場の一つだったり、建築ファンにとっても気になるワールドカップ。が、それはごく一部で、建築からアートまで世界の度肝を抜くプロジェクトが実はほかにも目白押しだ。
一連のカルチャー事業を総括するのは国家機関である「カタール・ミュージアムズ」で、そのトップを務めるのが、国の君主であるタミム首長の妹、シェイカ・アル=マヤッサ・ビン・ハマド・ビン・ハリーファ・アル=サーニだ。潤沢な資金にバックアップされ、彼女の指揮の元でカタールはその文化度を急速に上げている。
ということで、ワールドカップだけじゃない! カタールの建築やアートの見どころのベスト8を挙げてみたい。現地には行けずとも、サッカーの試合の合間に映像で映り出される可能性も大だ。後半で、今後建設予定の3つのミュージアムについても取り上げたい。
カタールの象徴となるよう、砂や鉱物がバラの花のように結晶する「砂漠のバラ」をイメージしたジャン・ヌーベルの建築は、規模もデザインも圧倒的。「死ぬ前に見たい建築」に値する大作だ。館内では先史時代から現在までの、自然史や遊牧民の民族史などを展示。石油の発見以前にカタールの経済を支えた天然真珠にまつわる展示もあり、ペルシャ湾岸に位置する砂漠の国の歴史と発展がわかる内容。アラン・デュカスのレストラン〈Jiwan Restaurant〉もあり。
2022年10月にお披露目になったばかりの最新作で、ドーハから北東に約100キロのところにある〈アル・ズバラ考古遺跡〉の近くに登場。真珠の採取と交易で栄えた城壁で囲まれた港町だったという一帯で、多くが砂に埋もれたままだが、一部は発掘保存されユネスコ世界遺産指定になっている。カタールの歴史にも目を向けてほしいということで、この場所に現代アートが登場した形だ。
作品は、半円形のスチール支柱の上に円形の屋根が乗った20のシェルターとスチールのリングが配置されたインスタレーションだ。屋根のサイズは直径4メートルから10メートルまで大小あり、半円型の支柱リングが天井のミラーに映り込んで「円」に見えるなど、自然の風景や現象と人の視覚の関係を問いかける。
「作品を通し、地球とのつながりを感じてほしい。ここを通過する人、動物、植物、そして歴史や遺産、さらに風、太陽の光、熱など、全てのものを祝福する作品です。ラクダが一休みするシェルターにもなります」
そう言うエリアソンだが、取材中、実際にラクダに乗った遊牧民がそばを通った。遊牧民にとっても人気スポットになるかも?
そのほか、この近くにはブラジル人アーティスト、エルネスト・ネトによる《Slug Turtle, TemplEarth》とレバノン人アーティスト、シモーネ・ファタルの《Maqam I, Maqam II, Maqam III》も近くに展示されている。