消えゆく「昭和のストリップ劇場」 女性写真家・松田優が写す「裸」の先にある人生の舞台裏〈dot.〉
2月21日からキヤノンギャラリー銀座で写真展「その夜の踊り子」が開催される。作者の松田優さんが追ったのは昭和の雰囲気が残るストリップ劇場の踊り子たち。
「自分の写真が作品として世に出るのは初めてで、どんな反応が来るのか、まったくわからない。踊り子さんのファンは喜んでくれると思うんですけれど、そうじゃない普通の人が見たら、いろいろ言われるかもしれないな、と思って、ちょっとドキドキしています」
かつて、全国には400軒ものストリップ劇場があった。しかし、時代の変化や警察の摘発によって激減し、今では十数軒が残るのみとなった。
作品の舞台は昨年5月に閉館した「広島第一劇場」。中国地方最後のストリップ劇場だった。
「全国のストリップ劇場を見てまわるなかで、雰囲気が一番好きな劇場でした。ところが、2020年夏ごろ、従業員と雑談していたときに『もう閉めるんだよ』と聞かされた。劇場内は基本的に撮影禁止なので、誰かが撮らないと残らないな、と思った」
■見に行ったらハマった
松田さんがストリップ劇場に興味を持ったの大学時代。映画づくりを学んでいた日本大学芸術学部の卒業制作で同級生がストリップ劇場の踊り子のドキュメンタリー映画を撮影した。
「それがすごくいい作品だったんです」
ただ、松田さんがストリップ劇場に足を運ぶようになるのはしばらく後のことだ。
「女性1人で見に行こう、って、なかなか勇気が出ないじゃないですか」
卒業後は共同通信社に入社。5年前、大阪支社の写真映像部に異動になった。
「20年春、コロナ禍で結構時間が空いたとき、そういういえば、あの卒業制作の作品よかったな、と思って、ストリップ劇場を調べてみたら、天満(てんま)にあった。で、見に行ったら、すごくハマったんです」
松田さんは昭和の香りが染みついた劇場で踊る踊り子たちの姿に強く引かれた。
「ミュージカルを見るのとはぜんぜん違う、すごく寂しさを感じさせる空間だった。そこで裸で踊っている姿を見ると、彼女たちの人生が思い浮かんだ。気にならないような古きずを見つけると、小さなころ、どこかでけがしたのかな、とか。どういう場所に住んで、どんな暮らしをしてきたのか。同い年の踊り子さんを見ると、同じ時間を生きてきたんだろうな、とか。自分の人生を振り返るきっかけじゃないですけれど」
それ以来、大阪以外の劇場にも訪れた。
今もストリップ劇場が多く残るのは東京周辺である。渋谷、新宿、上野、池袋、浅草、川崎、横浜など。関西は大阪と京都。九州は小倉。芦原温泉(福井県あわら市)や道後温泉(松山市)など、有名な温泉街にもある。
「ストリップ劇場にハマってから、全国をまわるスピードが自分でもびっくりするくらいすごくて」