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実は煽りタイトルだった? 意外と知らない西田幾多郎『善の研究』の「本当のテーマ」
2023-04-08
実は煽りタイトルだった? 意外と知らない西田幾多郎『善の研究』の「本当のテーマ」

 近代日本における「個の自覚」という同時代的な課題を背負いながら、〈自己と世界の関係〉を説明しようとしてきた思想家・西田幾多郎。その思想はどのようなもので、現代社会の課題を考える上でどのような意味があるのでしょうか。


 1911(明治44)年に出版された『善の研究』は西田の代表作として知られ、現在まで広く読み継がれている。だが、この書には日の目を見ることのなかったもう一つのタイトルがある。『純粋経験と実在』である。

 1999年、西田の孫にあたる教育学者上田薫から石川県宇ノ気町立西田記念館(当時)に、ある契約書が寄贈された。それは1910年10月16日に西田と版元である弘道館との間で交わされた出版契約書であり、そこには「純粋経験と実在」という書名が取り消し線で消され、代わりに「善の研究」と書き込まれていた。書名の変更については西田の承認印も押され、著者本人も了承していたことが分かる。

契約時に予定されていた書名が出版前に改題された事情については、弘道館から「もっと売れるような、人目を引きそうな書名を付けてほしい」という趣旨の要望があり、この本の出版を斡旋
(
あっせん
)
していた紀平正美
(
きひらただよし
)
が『善の研究』という新しい書名を提案したものだったと考えられている。 紀平は西田の四高講師時代の教え子であり、当時弘道館から発行されていた『哲学雑誌』の編集を担当していた人物であるが、彼は米国の哲学者J・ロイスの『善と悪の研究』(Studies of Good and Evil, 1898)からヒントを得て『善の研究』と命名したと考えられている。
西田は『善の研究』の「序」のなかで、「此書を特に「善の研究」と名づけた訳は、哲学的研究が其前半を占め居るにも拘
(
かかわ
)
らず、人生の問題が中心であり、終結であると考えた故である」(『西田幾多郎全集』第1巻6頁)と説明している。しかし、後年の書簡では「私の「善の研究」というのは当時本屋の求
(
もとめ
)
もあり他人のつけたものだがどうも面白くない」(一九三九年五月二十二日、柳田謙十郎宛、『西田幾多郎全集』第22巻235頁)と述べており、西田自身はこのタイトルに違和感をもっていたことが分かる。

 『純粋経験と実在』から『善の研究』へ。この改題によって、タイトルを目にした人が受け取る印象はだいぶ異なるものとなった。前者ならば地味な哲学書と見える。『純粋経験と実在』というタイトルを見ただけでは具体的内容をイメージしづらい人も多いのではないか。

 ところが『善の研究』というタイトルならば、たちまち「善とは何か?」「人はいかに生きるべきか?」といった倫理的な、あるいは人生論的な問いが呼び起こされる。より多くの人に親しみやすいのは明らかに後者のタイトルである。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/9f9ba205977e210fc307f5a6fa6faae27d68fb36

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