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父の愛した赤提灯――「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(63)
2022-08-25
父の愛した赤提灯――「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(63)

 お次の方どうぞ、という声で診察室に入るとムッと甘ったるい香りが鼻をついた。
「やあ、君か。久しぶり、見違えたよ。乾杯だ」赤ら顔の医者は疲れた笑みで、隠してあった一升瓶を取り出すとコップになみなみとついだ。
「あなた、だめよ。お仕事中でしょう」
 人体模型の陰から奥さんらしい眼鏡をかけた看護師がとがった声を発したが医者は一向に気にする風がない。
「お父さん、亡くなったってね」どんより濁った眼には目やにがたまり、豹のようにしなやかだった体も薄汚れた白衣の下で醜く緩んでいる。
 父は若い頃、農閑期に牛に荷車を引かせて運送業を営んでいた。足しげく通っていたのが、農協横の「鳥永」という焼き鳥の屋台だった。女将の良枝とはどういう関係だったのか知らないが、母が時々怒鳴り込んでいたおぼろな記憶がある。良枝親子は城跡の向こう、ドブ川沿いのじめじめした窪地に住んでいた。父の言いつけで、狭い路地の奥にあるあばら家を訪ね米と引き換えにキムチや豚足をもらってきたものである。
ふて寝している兄の横で悲しそうな目を向けてきたのが祐久だった。私よりいくらか年上で頭が切れ運動神経も抜群だった。
 ある日、空き地で野球をしていると窪地の子どもたちが押しかけてきた。強引に仲間に入って遊んでいたが、何か気に障ることでもあったのか祐久の兄が暴れだし何人かをバットで殴りつけた。そこへクリーニング屋のオヤジが通りかかった。ケンカを止めるかと思いきや、自分の子だけ自転車に乗せるとそそくさと帰って行った。
 乱闘になり、まさに私がバットを振り下ろされようとした瞬間、「やめろ、兄貴。いいんだ、そいつは」と声がとんだ。祐久だった。兄は怪訝な顔をしたが、バットを放り投げるとクルリと背を向けた。
 中学生になった私は勉強が苦手で特に数学の成績が悪かった。見かねた父が「兄貴みたいにやさしい家庭教師を雇ってやったぞ」とニヤニヤしながら告げた。冗談だろうと思っていると、本当に家庭教師が現れた。祐久だった。地元の名門校の高校生になっていた寡黙なこの俊英は教え方はうまくなかったが、自分で難問もすらすらと解いてみせた。
 ある日、野良猫が部屋に迷い込んできた。家庭教師はやさしい声でポケットのカステラを食べさせ、こちらを向いて照れ笑いをした。彼の笑った顔を見たのはあれが初めてではなかったか。
 間もなくして父が声をひそめて打ち明けた。祐久が東京の大学の医学部に合格したという。友達の車で上京するが、我が家に荷物を持ってきてここから出発するのだと奇妙な説明をする。きっと私が訝しげな表情を浮かべたのだろう。父が断じた。当たり前じゃないか、まさかあの窪地のボロ家に友達を呼ぶわけにはいかないだろう。わかってやれ。
 その日、母の良枝も私の家にやってきた。息子を固く抱きしめうれしそうに泣いていた。半島から船で日本に渡り、港からここまで歩いてきたの。住むところも食べるものもない中、女手ひとつでふたりの子を育てるのは並大抵の苦労ではなかった。祐久は学資も新聞配達で貯めたわ。やさしくていい子なのよ、そう何度も繰り返すのだった。
 私も東京の大学へ進み中堅商社に就職が内定した。その報告を兼ねて帰省した際、父と屋台で乾杯した。珍しく良枝も一緒に飲んだ。
祐久が駅前に病院を建てたぞ。えらい出世だ。嫁さんが看護師で父親が裕福らしい。ポンと何千万円もの大金を出してくれたそうだ。あいつも頑張ったが、ようやく春が来たというわけだ、なあ良枝、とねぎらった。
 買い物のついでに、開業したという医院を見に行った。木下内科という大きな看板がまぶしかった。父に報告すると、どうだ、立派なものだろう。鉄筋コンクリートだぞと自分のことのようにうれしそうだった。あの人の苗字って木下だったっけと尋ねてみる。
 いや、養子に入ったのさ、ボソッと言う。これで、良枝さんも一安心だね。ああ、赤提灯ともおさらばして楽隠居だ。ただ兄貴がヤクザでな。この前、出入りがあって今刑務所だ。暴れることでしか自分を表現できない男なのさ。それに比べればあいつは幸せだね。ちょっと酒を飲みすぎるから、それが心配だが。
 それから5年。お盆に帰省し風邪をひき、木下内科へ行くことになったのだ。
「お父さん、亡くなったってね」
「ええ、肺がんで」
「お父さんは苦労人だったよね。だからやさしかった。母も俺もよくしてもらったものさ」
「祐久さん、立派な病院でたいしたものじゃないですか。父も喜んでいましたよ」
「俺は何もしちゃいない。かみさんのオヤジが土地成金でね。それだけのことさ」
 医者はグイとコップの酒をあおった。あの悲しい目だった。妻の冷たい声がまた聞こえてきた。
「あなた、いつまで無駄話しているの」
「いや、いいんだ、この人は」
「でも」さらに何か言い募ろうとした、その時だった、祐久の顔色が変わった。
「うるさい」びっくりするほどの大声を上げて立ち上がると手にしていたコップを思いきり投げつけた。それは、ロッカーに当たって砕け散った。しばらくして腰を下ろすとため息をついた。
「最近、考えるんだよ。俺の家族の人生ってどんな意味があったのだろうかって。兄はあんなだろう。母は幸せなのか?俺にももうすぐ赤ん坊が生まれるのだが、その子にうまく説明できるか不安なんだ」
 医者の顔を見ながら、なぜか不思議な懐かしさを感じた。
 翌年の秋のこと、良枝から突然、電話がかかってきた。電話口で押し黙ったままだ。どうしたのと聞いても返事がない。しばらくして
「死んだ、あの子が。祐久が」
「まさか、そんな」
「馬鹿なヤツだよね」
 辛そうに、そうつぶやいた良枝、また屋台を始めたのだろうか。
    (完)


希代 準郎
きだい・じゅんろう
作家。日常に潜む闇と、そこに展開する不安と共感の異境の世界を独自の文体で表現しているショートショートの新たな担い手。この短編小説の連載では、現代の様々な社会的課題に着目、そこにかかわる群像を通して生きる意味、生と死を考える。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/1a6005e53441fa947d91d617cc6d3a0385e7e7aa

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