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「眼と遊ぶ」体験から、映像の起源を問い直す。岩井俊雄の「時間層」シリーズが提示するものとは?
2023-07-11
「眼と遊ぶ」体験から、映像の起源を問い直す。岩井俊雄の「時間層」シリーズが提示するものとは?

 メディア・アーティストであり絵本作家の岩井俊雄が総合ディレクションを務めるプログラム「メディアアート・スタディーズ2023:眼と遊ぶ」が、東京・渋谷の
シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]
(以下、CCBT)でスタートした。会期は8月20日まで。プログラムディレクションは、橋本典久(プリミティブメディアアーティスト)、明貫紘子(キュレーター、アーカイブ研究者)。

 CCBTは、2022年10月に渋谷にオープンした東京都初のデジタルクリエイティブに特化した創造拠点。アート、
テクノロジー、デザインをテーマにした様々なプログラムを通じ、参加する人々すべてが創造性を発揮する、広く開かれたプラットフォームとなることをミッションに活動している。

 本プログラムでは、岩井の代表作を総合的に展示。アートやテクノロジーの基本である「映像」の
仕組みや原理を「体験する、発見する、つくる」ためのプレイグラウンドとして展開されている。

 メインとなるのは、約25年ぶりに修復・展示される岩井の「時間層」シリーズだ。暗室で展示されるのは《時間層 Ⅰ》(1985)《時間層
Ⅲ》(1989)《時間層 Ⅲ》(1989)の3作品となる。岩井の卒業制作でもある《時間層
Ⅰ》(1985)は、岩井の目や手が印刷されたロールが回転。ブラウン管テレビから発せられる光の点滅のパターンによって、その動きが変化するというものだ。「この映像の面白さを多くの人と同時に楽しむにはどうしたらよいか」。その考えが、このような大型の装置としてアウトプットされた理由のひとつである。

 その後、1989年に制作された《時間層
Ⅲ》は、同年に開催された世界デザイン博覧会に出展されたものだ。Ⅰの仕様では、床置きされたテレビの影が落ちてしまうところを、真上に取り付けることによって改善。球体全面に光が当たるようにも工夫されている。


 また、シリーズ3作目ということで、各装置のテーマを「無機物」「植物」「動物」に設定し、光の色もRGBの三原色を利用するなど、デザイン博のために、エンタメ要素を加えた仕様となっている。

 このシリーズで最も新しい《時間層
Ⅳ》(1990)では、平面のアクリル板が3層になっており、手作業で貼られた幾何学図形が最下層のアルミ板に影を落とし、立体感が生まれている。この時期に誕生した小型テレビが内蔵された巨大プロジェクターをスポットライトのように活用、約20~30の光のパターンを照射することで、視覚的にも不思議な動きが生じるのだ。これらのシリーズは、いくら見ていても飽きることがなく、映像表現に関する理解も深まるものだ。

 暗室の外には、現在、東京都写真美術館に収蔵されている《時間層 Ⅱ event
version》(1985)の再現や、同シリーズを試作していた際の岩井のメモも一部展示されており、作品鑑賞をする際にあわせて見ることで、構造や仕組みを分解しながら考えることができるだろう。


 また、岩井作品のほかにも「19世紀に誕生した映像装置」の再現が約20種類ほど設置されている。資料として美術館などに収蔵されると、ガラスケースで展示されることも多いが、このエリアでは装置を触りながらどのように動くのかを観察することができるため、より映像表現への理解を深めることができる。また、パネルにはその装置の解説と、再現を制作した際の岩井や橋本によるメモも記載されており、制作者らにとっても新たな気づきがあったことがわかる。岩井の「時間層」シリーズは、ここで見られるロジェの装置や古川タクによるアニメーションに大きな影響を受けているという。


 本展の開催に際して岩井は次のように思いを語った。「自身が試したいアイデアはたくさんあり、思いつく度にノートに書き留めているが、当時は技術が追いつかず、実現できなかったものも多い。今回のプログラムに当たって、『時間層』シリーズの修復を行ったが、CCBTやスタッフの協力もあり実現することができた。最近は
メディア・アート
から離れていたが、CCBTのような場所があれば、新たなアイデアも実現できるかもしれない。また、昨今は映像技術が発達し、多くの人々が利用しているが、その技術に関してはブラックボックス化している。自動生成もどこかで見たことのあるアウトプットばかりだ。自身の感性を活かしながらこのような作品を制作することで、楽しみながら映像技術について知ってもらう機会をつくることができる」。


 機材の劣化や変化の影響を大きく受けるメディア・アート作品の修復保存は、いまや喫緊の課題となっており、岩井の「時間層」シリーズもこの課題を抱えていた。メディア・アートの誕生から約半世紀たった現在、より議論される必要性があるといえるだろう。


 ほかにも、会場には創作コーナーが設置されているほか、会期中には多くのワークショップも実施予定。これらの詳細や申込みに関してはCCBTの公式サイトで確認してほしい。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/e345dede687d2476dcffa9495efc60b8453cdb77

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