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眩暈がしそうな読書体験『インヴェンション・オブ・サウンド』
2023-04-07
眩暈がしそうな読書体験『インヴェンション・オブ・サウンド』

「エブエブ」こと「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」の主要6部門制覇というオスカー史上に輝く偉業で幕が下りた今年のアカデミー賞だが、作品賞や脚本賞を惜しくも逸した「トップガン マーヴェリック」も、音響賞に輝いた。

ハイテクな空中戦に臨場感を与えたサウンド・エフェクトが評価されての受賞だったが、この賞は撮影現場での録音から特殊効果音の創作に至るまで、映画を音響面から支える音の職人たちに贈られる。
 
今回ご紹介するアメリカの作家、チャック・パラニュークの『インヴェンション・オブ・サウンド』(池田真紀子訳・早川書房刊)の主人公ミッツィ・アイヴスの職業も、音響効果のスペシャリストだ。

■悪夢のような2人の主人公の交わり

ミッツィはハリウッドの映画業界に棲息し、殺人被害者の断末魔の悲鳴や、階段を転げ落ちて頭蓋骨が砕ける音といった、恐怖映画などでおなじみの悪趣味な効果音の数々をつくりあげては、映画会社に売り込むことを生業としている。

そんな彼女には、秘めたる野望があった。自分がつくり出した音を使って、全世界一斉に悲鳴を上げさせようというのだ。あたかも緊急車両のサイレンに共鳴した犬たちが、町中を彼らの遠吠えで満たそうとするかのように。

そして、主人公がもう1人。17年前に幼い娘が行方不明となり、未だその悲劇と折り合いをつけられずにいるゲイツ・フォスターである。似た過去を持つ者たちによる共助グループの支援で、かろうじて社会生活を送っていたが、愛娘ルシンダの幻影を追い、小児性愛者たちに罰を与えようとしては、行く先々でトラブルを引き起こしていた。

薬物に溺れ、自らの命も弄ぶ独身女性と、わが娘を探して、ダークウェブの徘徊や児童ポルノの閲覧をやめられない中年の男。このパラノイアたちの行く道が、やがて思いがけない形で交わり、悪夢のような出来事が現実のものとなって読者の前に立ち現れる。
 
パラニュークの小説が翻訳紹介されるのは、『ララバイ』(2002年、以下括弧内は原著刊行年)以来、なんと18年ぶりのことだ。しかし、そこにさほど時間の経過が感じられないのは、いまもまだ『ファイト・クラブ』(1996年)の残像が多くの人々の心にあるからだろう。デヴィッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演の同題映画化作の色褪せない素晴らしさも一因かもしれない。

作者は、いわゆるジャンル小説の作家ではないが、『ファイト・クラブ』に明らかなように、エンタテインメントとしても読者にアピールする要素を十分に備えている。その持ち味は、この『インヴェンション・オブ・サウンド』(2020年)においても顕著だ。

その一例が、プロット(構成)とナラティブ(叙述)の絶妙なコンビネーションである。映画でいうカットバックにも似た、交互に語られる2つの物語が、やがて意想外の構図を浮かび上がらせていく。この手法は、ミステリ等でもおなじみのものだろう。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/4079a4db48a39d57c6697df84769a95ecc69be9c

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