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「FUJI TEXTILE WEEK 2022」に見る。富士吉田市のテキスタイルシーンと産業アートの可能性
2022-11-22
「FUJI TEXTILE WEEK 2022」に見る。富士吉田市のテキスタイルシーンと産業アートの可能性

 富士山から流れ落ちる清涼な渓流の水の恵みによって、1000年以上続く織物産業の歴史を有する山梨県富士吉田市。そこを舞台として開催される芸術祭「FUJI
TEXTILE WEEK
2022」が今年で第2回を迎えた。本芸術祭は国内外アーティスト10組によるテキスタイルをテーマにしたアート展「織りと気配」や、12の機屋による産地の歴史や現代のテキスタイルシーンを紐解く展示会「WARP&WEFT」など計4つのプログラムで構成されている。



 美術評論家であり森美術館前館長の南條史生がキュレーションするアート展では、アーティストがテキスタイルを素材にした作品や、機屋との共同作業で作り出したユニークな作品を展示。「堅固な形状を半永久的に維持するはずの彫刻」とは対極の、「しなやかに変化し、ゆらぐ彫刻」の可能性を追求するものだ。参加アーティストは、安東陽子、パトリック・キャロル、村山悟郎、エレン・ロット、高須賀活良、小林万里子、落合陽一、シグリット・カロン、YUIMA
NAKAZATO。


 もともと銀行が所有していたという3階建ての蔵に作品を展示するのはテキスタイルデザイナーであり、コーディネーターの安東陽子。安東は空間づくりの仕事経験を生かし、蔵の上下空間を突き抜けるような糸の束を設置した。差し込む光によって柔らかく艶めく縦糸が、蔵の暗闇と調和した空間をつくり出している。


 喫茶店の跡地には、アメリカ・カリフォルニア出身のアーティストで元ライターのパトリック・キャロルの手編み作品が並ぶ。2019~20年に父の終末医療による死とパンデミックという2つの悲劇を体験したキャロルは、同時期に入手していた家庭用手編み機で言葉や文章を綴った作品を紡ぐことに没頭した。会場では、父親を失った悲しみや自身のジェンダーに関する言葉が、キャンバスや衣服にかたちを変えて展示されている。


 自己組織的なプロセスやパターンを絵画やドローイングに落とし込む手法で表現するアーティスト・村上悟郎は、手塚愛子(2021年同展出展作家)の提案から、自身の素描をテキスタイル作品として地元の機屋とともにつくりあげた。コンピューターにおけるプログラミングの原型とも言われるジャガード織機。この作品を制作に使用された紋紙(約25万枚)の一部が展示空間内に設置されることで、プロセスにおける情報量の膨大さを物語っている。


 村上の作品は旧文化服装学院にも展示されている。ツリー状に編まれた紐をキャンバスとしてドローイングされた《自己組織化する絵画\u003c過剰に>》は、立体上で村上の手法が展開された実験的な作品と言える。また、同会場にはフランス人アーティスト、エレン・ロットの《とまらないもの・ONGOING》も展示。「街の発展と衰退の記憶」から商店街のファザードに着目した、コラージュのようなテキスタイル作品が目を引いた。本作は織りの目も美しいため、ぜひ間近でも鑑賞してみてほしい。


 同会場1階では、長年テキスタイルの専門家として富士吉田周辺で活動してきたアーティスト・高須賀活良の《NEGENTROPY(ネゲントロピー)》が展示されている。高須賀の制作コンセプトは「もののルーツを探る」。テキスタイルのルーツを糸、植物、土、と遡ることで、本展では自身で編んだテキスタイル作品を「土に還す」ことを実践した。その一連の取り組みには、テキスタイルを通じて浮かび上がる人間の営みと、死と再生の壮大なエコシステムが描き出されている。


 月江寺の池に映し出されるのは、テキスタイルの技法を用いて生命の本質的な姿を描き出す小林万里子による作品。小林は富士吉田と馬の関係に着目し、登山用語で「馬返し」と呼ばれるキーワードから《足を汚し、世界を開く》を制作した。そこに込められた「人は自身の足を汚してでしか行けない場所がある」というメッセージの通り、作品に刺繍された馬の胎児が水面に映ることで自分の足で立つ様子が、この展示空間ならではの表現として成立していた。


 メディア・アーティストの落合陽一は、織機の原点とコンピューターの共通点に関心を持ち、木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)伝説を持つ小室浅間神社で大型LEDによる映像作品を展示。精細な織りと上品な光沢を持つ富士吉田の特産「甲斐絹(かいき)」と木花咲耶姫命伝説が複合的にAI生成された映像には、現代テクノロジーで生み出したような美しいモアレが自然発生していた。


 歴史的に繊維産業と深いつながりのあるオランダ・ティルブルグ在住のアーティスト、シグリット・カロン。その作品は、展示会場である福源寺を丸々覆うようなスケール感の
サイトスペシフィック・アート
だ。荘厳な宗教空間である福源寺と、カロンが富士吉田から受けたインスピレーションがカラーやモチーフとして表れ、一体化している。作中に使われている布は、富士吉田産とオランダ産のものが入り混じっている。

 近年パリコレでも注目を集めている日本人ファッションデザイナー・YUIMA
NAKAZATOは、2023年1月に開催されるパリ・オートクチュールウイークのための4分の1スタディーモデルを制作。インスタレーションとして、本展に出展されている。富士吉田の上質なコットンを用いて1枚の布から制作されるこれらのスタディーからは、アイデアの変遷や新たなコレクションの全体像が見て取れ、鑑賞者がこれら過程を目の前にできるのは貴重な体験であると言える。

 ほかにも、今年の11月にオープンしたばかりのFabCafe
Fujiでは、産地の歴史や富士吉田市の原点である甲斐絹の新たなかたちを紹介する展示「WARP&WEFT」や、事務局によって選出された作家らがテキスタイルの可能性を示す「フリンジプログラム」も実施。アート展とあわせて鑑賞することで、より富士吉田市のテキスタイルシーンに対する理解を深めることができるだろう。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/44eaeb43c90851525fc79ee73913ee44f952bb74

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