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「すべての魅力内包」「正面から震災描く」…第168回芥川賞・直木賞の選考会講評
2023-01-28
「すべての魅力内包」「正面から震災描く」…第168回芥川賞・直木賞の選考会講評

第168回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日開かれ、芥川賞は井戸川射子(いこ)さん(35)の「この世の喜びよ」(群像7月号)と佐藤厚志さん(40)の「荒地の家族」(新潮12月号)に、直木賞は小川哲(さとし)さん(36)の「地図と拳(こぶし)」(集英社)と千早茜さん(43)の「しろがねの葉」(新潮社)に決まった。選考会での講評を紹介する。

芥川賞「2作品が頭一つ抜ける」

芥川賞に選ばれた2作品は初回投票から得点が頭一つ抜け、すんなり同時受賞となった。会見した選考委員の堀江敏幸さんは「言葉の一つ一つが粒立つような作品と非常に堅実な書き方をした作品、対照的な2作が選ばれた」と評した。

ショッピングセンターで働く中年女性「あなた」の日常を描いた井戸川作品。特徴的な二人称の語りが「実験的というわけではなく、作品が求めている世界と非常にうまく合致している」とされ、「平凡な日常を描いて平凡さに落ち切らず、輝かせる呼吸が素晴らしい」と絶賛された。

東日本大震災後に仕事や妻を失い、それでも生活を立て直そうとする植木職人が主人公の佐藤作品は、「震災後10年の世界を、リアリズムの手法で正面から衒(てら)いなく描いた」点が高評価につながり、「震災にここまでまっすぐ向き合って、直球で書き切る小説はこれまでなかった」とたたえられた。

安堂ホセさん(28)の「ジャクソンひとり」(文芸冬季号)は「複合的な差別の問題を扱いつつ、書き方が重くならずリズムがある」と評されたが、「もっと言葉のキレを重ねてもいいのでは」との意見やラストシーンへの疑問も付され、受賞を逸した。

多言語話者をテーマにしたグレゴリー・ケズナジャットさん(39)の「開墾地」(群像11月号)は、当事者の感覚を日本近代文学の手法で描写するが、「もう少し文化的束縛を内側から描いてほしい」と注文が付き、選外に。

候補2回目となる鈴木涼美さん(39)の「グレイスレス」(文学界11月号)は、ポルノ業界と有産階級家庭という隔絶した世界の往復が注目されたが、「その接続がいまひとつ」との声もあり、支持が広がらなかった。

直木賞「異なる歴史小説の可能性」

直木賞を射止めた2作品はともに歴史小説。会見した選考委員の宮部みゆきさんは、「エンタメ小説の可能性、同じ歴史小説でもこんなに違うんだとアピールできる」と盛り上がった選考会の様子も明かした。

「最初の投票から飛び出して高い得点」だった小川作品は、満洲の架空の炭鉱都市の半世紀を描いたエンタメ歴史小説。登場人物が多く、冒険小説、謎解き、SF的要素、アクションなどさまざまな味わいがあり、「小説が持っているすべての魅力が内包されている作品」と評価。

さらに「ものすごい取材と資料の読み込み、咀嚼(そしゃく)して自分の言葉にする努力を惜しまなかった姿勢に選考委員一同が敬意を表した」とも付け加えた。

同作に続いた千早作品は、戦国末期の石見銀山を舞台にした女性の一代記。宮部さんは「豊かな幻想性、血と土のにおいがしてくるような筆力、千早さんの特色が120%発揮された作品」「見事に腰が据わった文章」などと指摘。

候補作のなかでページ数は一番少ないが、「情報量や登場人物は多いのに、煮詰めて煮詰めて必要なことだけを書いている。どんな原材料かわからないジャムを食べているような酔い方をした」と評した。

3番手だった一穂ミチさん(45)の「光のとこにいてね」には「支持する声もあった」、凪良ゆうさん(50)の「汝、星のごとく」には、「少し古めかしい」とコメント。両作品とも運命の出会いをした2人の物語で、「カラーが似た作品が候補となり、どちらも損をしてしまった」。

雫井脩介さん(54)の「クロコダイル・ティアーズ」はサスペンスミステリーだが、「読者が置き去りになるようなところがある」などと選に漏れた。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/22e65b3e2df170bd6c85d35d8ff55215dbadcf1a

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