「但馬牛」世界ブランドへ、飼育システムが農業遺産認定…国内初の血統登録簿・閉鎖育種など評価

国連食糧農業機関(FAO)から「世界認定」を受けた但馬牛の飼育システム。牛の血統登録「牛籍簿」を国内で最初に作り、地域内だけで繁殖させる「閉鎖育種」と呼ばれる取り組みなどが評価された。
7日、香美町役場で行われた記者会見には、同町とともに取り組んできた新温泉町の西村銀三町長らも同席。認定通知書を手にした浜上町長は「畜産農家のみなさんの誇りや所得の向上につながれば、地域全体が盛り上がる」と喜んだ。推進協議会では、認定記念のシンポジウムなどを計画している。
地元の畜産農家や但馬牛に関連する観光関係者からも歓喜の声が続いた。
新温泉町で若手の畜産農家として汗を流している男性(29)は「うれしい。子牛の相場が上がり、若い人が畜産に入ってきやすい環境になれば」と期待。同町畜産振興会の高美治会長(56)も「今までやってきた美方地域の畜産をしっかりと続けていかないと」と気持ちを引き締めた。
全国各地に子孫が広がる名牛「田尻号」の古里で、牛舎などを巡るガイドツアーが実施中の香美町小代区でも観光協会の邊見裕作会長(42)が「『和牛のルーツの地』として小代を知ってもらう機会になってほしい」と話した。
但馬牛の飼育環境を巡っては、子牛の価格が堅調な反面、ロシアによるウクライナ侵略の長期化に伴う飼料の高騰、限られた遺伝資源での改良などが課題になっている。
JAたじまによると、全国的に子牛価格が下落傾向にある中、但馬家畜市場では雌・去勢とも取引価格は平均70万円台。「全国でも1、2番の値」という。訪日外国人客らによる神戸牛の需要増も価格に反映され、若手農家の増加にもつながっている。