鹿皮のにかわを使った書画50点の展示会 駆除獣で伝統守る 奈良

膠は牛や鹿などの皮や骨から採れる素材で、古くから天然の接着剤として日本画や工芸品の制作や修復に用いられ、墨の材料としても使われてきた。しかし、伝統的な手工業による鹿皮の膠の生産が少なくなったことから、同市の五條新町にアトリエを構える日本画家の杉本洋さん(71)=東京都青梅市=が5年前、伝統製法による生産に乗り出した。
駆除動物を解体処理する「ジビエール五條」(市食肉処理加工施設)から鹿皮の提供を受け、金剛山系の地下水を使って煮詰め、抽出液を自然乾燥して製造し、薬品は一切使わない。取り組みを広げようと、2019年、自らが代表理事となって「一般社団法人 日本文化資産支援機構」を設立し、鹿皮膠を使って文化財の修復もしている。
今回の作品展は、6月の東京展に続く巡回展として初めて地元・五條で開いた。鹿皮膠を混ぜた岩絵の具を使った日本画や書などの作品には「顔料に良くなじむ」「透明度が高く、美しい」などと、各作家の膠を使った感想も添えられている。
杉本さんは「良質な鹿皮膠を普及させるため、着実に生産量を増やしていくとともに、文化財修理や地域に根ざした活動に取り組んでいきたい」と話している。