スキーマ建築計画が立ち上げた国際交流の新拠点〈LLOVE HOUSE ONOMICHI〉とは?
長坂常率いるスキーマ建築計画が2022年11月25日、広島・尾道に〈LLOVE HOUSE ONOMICHI〉をオープンした。長坂がひと目惚れし、21年夏に譲り受けた築約110年の茶園(さえん)を再生した、創造と文化交流のための施設だ。さる2022年3月には、再生前の茶園にて、譲り受けた経緯や今後の計画などについてインタビューをおこなったが、ついに完成となった。これから不定期で世界の多様な分野のクリエイターが滞在し、展覧会やイベントを開催していく。まずはオランダの〈ロイドホテル〉などを手がけたアートディレクター、スザンヌ・オクセナールを招き、作品展示と交流を行うという──。
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そんな事前情報を頼りに早速訪ねてみると、現れたのは民家然とした玄関の構え。目立つ看板などはなく、特にイベントが華々しく行われている様子は感じられない。不思議に思いながら挨拶すると、スザンヌがフレンドリーに出迎えてくれ、やがて玄関すぐ横の部屋から寝起きの長坂が登場した。
「あ、おはようございます」
友人の家を訪ねたときのような素朴な出迎えに、自ずと気持ちがほぐれていく。作品の中で宿泊などができる滞在型の体験施設は増えているが、ここは逆。クリエイターが滞在する家を、客が訪ねる方式だ。主要なスペースは畳敷きで、腰を下ろすと景色や通り抜ける風が心地よく、長坂やスザンヌ、他の来客たちと話し込み、つい長居してしまう。多くの芸術祭や展示会に見られる非日常的でスピーディーな、ややもすれば消費的な鑑賞スタイルとは全く異なるが、これこそが長坂の狙いだという。
「クリエイターが住んでいるところに、お客さんが訪ねてくる。そこで洗濯物を干していたり、素の状態をさらしながら交流するのがいいんです。以前は情報発信のあり方が今とは違ったので、ミラノやヴェネチアなどで一堂に会してコミュニケーションを取るのが有効だったけど、これからの国際交流は個人と個人で、時間をかけて深くコミュニケーションを取ることが大事になると思うので」