埼玉・秩父の「龍勢」3年ぶりに打ち上げへ 17流派が準備に熱
龍勢は地域にある椋(むく)神社の秋季例大祭で五穀豊穣(ほうじょう)や天下泰平などを祈願して奉納される伝統行事。戦国時代にノロシから考案されたなど起源には諸説がある。「耕地」と呼ばれる小集落の住民を中心にした27流派ごとに製造技術などを伝承する。ただ、今回はコロナの影響や伝承者の減少で参加は17流派にとどまる。
「巻雲(けんうん)流」は18日、久長集落の集会所近くで、「たが掛け」をした。細く加工した竹を、松でできた「筒」に巻き付ける作業だ。作業場となった駐車場の屋根を雨が激しく打ち付ける中、メンバー22人のうち半数が集まった。
「筒」は約10年前に切り出してから乾燥しないよう水に漬けた松の幹から作る。本来なら打ち上げの1年前に出して乾かすが、2年間の中止で今回は3年ほど置いたという。縦に二つに割って内側を削るなどの細工をしてから再び二つを合わせ、高さ3尺3寸(約1メートル)、一番太い底の部分で5寸(約15センチ)の「筒」を9月4日に仕上げていた。
打ち上げ前に「筒」の内側にロケットの燃料になる火薬を詰め、約300メートルの高さまで飛ぶ推進力になる。そこで、発火させても圧力で「はねる」(壊れる)ことがないよう、きつく「たが」をかける必要がある。
「たが」は、竹を丸い輪になるように曲げながら何重にも上下に交差させて作る。「筒」は上部ほど細くなるので「たが」の径も小さくしなければならない。内側をなたでそいでいるとはいえ、硬い竹を曲げるのには腕力が必要だ。若手メンバーが神妙な顔でコツを先輩に教わる場面もあった。それでも、若手が輪になった竹を筒に上から通しても、「巻が緩い! だめ」と作り直しを求められることも。締め付けのゆるい部分に圧力がかかって「はねる」からだ。「採用!」になると、筒をはさんで両側に座った2人がそろって「せーの」と声をかけながら木づちを使ってたたいて落とし、固定。1日がかりで28本の「たが」が取り付けられた。23日以降、火薬を調合し、詰める作業が続く。
巻雲流代表の芦田芳雄さん(63)は、3年ぶりの作業に「やり始めると、みんなよくわかっていた」とひと安心。最年少の20歳のメンバーら初めて参加した人がいたことも喜んだ。「(伝承を)つなげていくことが大事。きれいに上がっれば、喜ばれると思う」と打ち上げの日を心待ちにする。
当日は椋神社近くで、午前8時40分~午後1時半に15分間隔で17本が打ち上げられる予定。感染対策で以前のような桟敷席は設置しない。問い合わせは同市吉田総合支所地域振興課(電話0494・72・6083)。