ほどよい上品さとおしゃれ感「付けさげ」ならではの魅力と選び方は?プロが解説
「付けさげ」は店頭に並んでいる時には「反物」の状態で、陳列されている場合は、お召しになった時に前姿に現れる「上前の前身頃(まえみごろ)」の柄が見える状態に広げてあることが一般的です。店頭でご覧になる際には、訪問着や留袖のように着物の形(仮絵羽の状態)になっていないもの、と念頭に置かれるとよいでしょう。
染めの反物(白生地を染めてあるもの)は大きく3種類ー付けさげ、小紋、色無地ーがあり、このうち「付けさげ」と「小紋」が柄のある染めの着物になります。一般的には、上下(天地)の区別なく全体的に柄を配した(もしくは着物全体に柄づけされた)ものが「小紋」で、カジュアルな場面やプライベートで着物を楽しむ場面に相応しいとされています。
一方「付けさげ」は、訪問着を簡略化しつつ、柄を置く場所や柄の上下の向きに規則性をもたせたもので、「やや改まった(セミフォーマルな)装い」「控え目な印象をもちたい時の礼装」として用途が分けられています。
一般的に「付けさげ」は、上前の「前身頃(まえみごろ)」「胸」、前身頃にあわせる「衽(おくみ)」、下前の「後身頃(うしろみごろ)」、それから「右袖の後」「左袖の前」に柄が置いてあり、それらは常に上下を守って描かれています。
前姿と後姿が連続する一枚の生地である着物は、肩や袖の「山」と呼ばれる部分を頂点として、上下の向きが反対になります。振袖、留袖、訪問着などの絵羽の着物と同じように、「付けさげ」はこのことを予め想定し、仕立てたときに全ての柄の上下が同じ向きになるようにしてあります。
<画像>女性のきものの各部の名称。
店頭で「付けさげ」を反物でご覧になる際に、反物を繰って最初にあらわれる柄は「袖」の柄であることが多いです (※注:柄の順番は商品によって違いもあります。ここでは一般的なものとして述べさせていただきます)。
次に現れる柄として、上前の「前身頃」が肩に続きーつまり前姿のメインの柄が裾から胸へと続き、そのまま「後身頃」となります。着姿になる場合の前姿は、反物の中ほどにある衽(おくみ)の柄を前身頃とあわせた柄となりますので、「衽をあわせて見たい」とおっしゃられるといいと思います。
試着の際、振袖や留袖、訪問着などは仮絵羽の状態になっているため実際に羽織っていただけますが、付けさげの場合には反物の状態であるので、そのまま肩から胸に掛け、柄の雰囲気を感じていただくような仮のフィッティングとなります。ですが、そのぶん、気軽にお顔映りなどをお試しいただきやすいかと思います。
<写真>付けさげの反物を繰ると、袖部分(写真下部)→メインとなる上前の前身頃(写真中央)→左胸の部分(写真上部)…の順で模様が表れます。反物を裁ち、縫い合わせたときの着姿を想定して、柄の位置や向きを表しています。
着物528,000円(高島屋)※価格はすべて表地・税込み