春日大社と杉本博司から、長期休館前のヴァンジ彫刻庭園美術館まで。今週末見たい展覧会ベスト6
「古美術の展示については、これがひとつの完成形」。杉本博司をして、こう言わしめる展覧会「杉本博司ー春日神霊の御生(みあれ)
御蓋山そして江之浦」が、古都・奈良の春日大社国宝殿で始まりを迎えた。レポート記事はこちら。
展覧会の目玉としてはまず、国宝の古神宝類や重要文化財の舞楽面など、春日信仰・春日若宮信仰の名品が挙げられる。展示内容には国宝の《本宮御料古神宝類
金銅鈴》、重要文化財の《古神宝銅鏡類 瑞花双鳳八稜鏡》や《木造舞楽面 地久》のほか 、2009年に杉本が設立した小田原文化財団が所蔵する《春日若宮神鹿像》
なども含まれている。
さらに、杉本の新作《春日大宮暁図屏風》と《春日大社藤棚図屏風》が初公開。さらに今年1月から3月にかけて神奈川県立金沢文庫で開催された特別展「春日神霊の旅
-杉本博司 常陸から大和へ」に出品された作品もあわせて展示されている。
会期:2022年12月23日~2023年3月13日
会場:春日大社国宝殿
住所:奈良県奈良市春日野町160
電話番号:0742-22-7788
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:2023年1月30日
料金:一般 1000円 / 大学生・高校生 600円 / 小・中学生 400円
10年以上の構想を経て実現。「ドリーム/ランド」(神奈川県民ホールギャラリー)
「日常/場違い」(2009)や「日常/ワケあり」(2011)、「日常/オフレコ」(2014)など、日常を作家の多様な視点によって切り取り、表現としてあらわした3本の企画展シリーズをかつて開催してきた
神奈川県民ホールギャラリー。これに続くシリーズ企画展の第1弾として、「ドリーム/ランド」が開幕した。会期は2023年1月28日まで。レポート記事はこちら。
本展キュレーションを務めるのは、神奈川芸術文化財団のキュレーター・中野仁詞。中野は2010年にパリのポンピドゥー・センターで開催された「DREAMLANDS」に触発され、10年以上の構想を経て本展を実現させた。
「ドリーム」という言葉は、「夢のような世界(理想・楽しいこと)」「将来の夢(願望・希望)」
「悪夢を見る(睡眠時に脳が見せる観念や心像の世界)」「夢物語(儚い絵空事)」
など多様な意味合いを示す。いっぽうの「ランド」も国や土地、場所など様々な意味を持つ。
参加するのは青山悟、枝史織、角文平
、笹岡由梨子、林勇気、山嵜雷蔵、シンゴ・ヨシダの7作家。「ドリーム」と「ランド」という2つのキーワードをもとに作家たちが具現化した作品と、トークやパフォーマンスによって構成される。
会期:2022年12月18日~2023年1月28日
会場:神奈川県民ホールギャラリー
住所:神奈川県横浜市中区山下町3-1
電話番号:045-662-5901
開館時間:11:00~18:00 ※入場は閉場の30分前まで
休館日:12月21日、28日、2023年1月11日、18日、25日、年末年始(12月30日~2023年1月4日)
料金:一般 800円 / 学生・65歳以上 500円 / 高校生以下無料
史上最大スケールでの回顧展。「展覧会 岡本太郎」(東京都美術館)
1970年に開催された日本万国博覧会のテーマ館《太陽の塔》で知られ、今日でも幅広い世代の人々を魅了する芸術家・岡本太郎(1911~96)。その岡本芸術を史上最大のスケールで回顧する東京都美術館の「展覧会
岡本太郎」は12月28日まで。レポート記事はこちら。
1929年に渡仏し、異国の地で研鑽を積んだ岡本は、抽象表現に影響を受けながら画家としてのアイデンティティを確立。帰国後に自らの芸術理念の核となる「対極主義」を提唱した。また、『今日の芸術』などの著作においても、多彩な文化・芸術論を展開。《太陽の塔》を頂点とする巨大な彫刻や壁画など生活のなかで生きる作品群は、「芸術は大衆のものである」という岡本の信念そのものを象徴しており、没後もなお、その生涯は作品とともに多くの人を惹きつけている。
本展では《太陽の塔》(50分の1の作品を展示)や《明日の神話》といった代表作だけでなく、再制作の初期作品4点や新発見とされる3点なども展示され、岡本太郎その人に迫ることができる。なお、巡回前の大阪展とは展示構成が大きく変わり、東京展のみの出品作も多数展示されているという点にも注目したい。展覧会レポートは
こちら。
会期:2022年10月18日~12月28日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
時間:9:30~17:30(金~20:00) ※入室は閉室の30分前まで
休館日:月
料金:一般 1900円 / 大学生・専門学校生 1300円 / 65歳以上 1400円 / 高校生以下無料 ※日時指定制
横尾忠則の「色」に注目。「横尾さんのパレット」(横尾忠則現代美術館)
色鮮やかな作品が特徴の横尾忠則作品。その色彩に着目した展覧会「横尾さんのパレット」は、神戸の横尾忠則現代美術館で12月25日まで。レポート記事はこちら。
「ピンクガール」「Y字路」「A.W.
Mandala」「寒山拾得」など横尾歴代の代表的なシリーズを含む作品と資料あわせて150点以上を、テーマや様式ではなく「色」で分類して紹介するもの。展示室全体をパレットに見立てるという、ユニークな切り口だ。
会場は2階(「赤」「青」「黄」「緑」)と3階(「黒・色彩」)の5色で構成。展示室の壁面がそれぞれの色で全面的に覆われながらゆるやかにつながるという、同館初の大胆な試みとなっている。横尾は本展開催に際し、「私はもともと色音痴で、色のことはよく判っておりません。従って、いつも使用する色は原色中心で、中間色を使用することが大変苦手です」としつつ、「何を描いているのかではなく、どんな色を使っているのかを念頭に置いて観て下さい」とメッセージを寄せている。
会期:2022年8月6日~12月25日
会場:横尾忠則現代美術館
住所:兵庫県神戸市灘区原田通3-8-30
電話番号:078-855-5607
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館30分前まで
休館日:月(9月19日、10月10日は開館)、9月20日、10月11日
料金:一般 700円 / 大学生 550円 / 70歳以上 350円 / 高校生以下無料
長期休館前最後の展覧会。開館20周年記念展「Flower of Life 生命の花」(ヴァンジ彫刻庭園美術館)
ヴァンジ彫刻庭園美術館の開館20周年記念展「Flower of Life 生命の花」
はこれまで同館で展示されてきた作品や、本展のために制作された新作を含む39作家の作品を紹介している。
本展覧会は作品との出会いに、自然とのふれあいに、また世界と向きあうための新しい視点を手に入れること、心動く瞬間を見出すこと、そうした一つひとつの経験の積み重ねが、いまを生きるための確かな力となることを願い、企画された。
なお、ヴァンジ庭園彫刻美術館は来年1月より大規模修繕のための長期休館に入るため、本展が休館前最後の展覧会となる。なお、新型コロナウイルスの影響で経営難に陥り静岡県に無償譲渡を含めた支援を求めている同館は、
存続に向けたアンケートと意見を25日まで募っている。
会期:2022年4月23日~12月25日
会場:ヴァンジ彫刻庭園美術館
住所:静岡県長泉町東野クレマチスの丘347-1
電話:055-989-8787
開館時間:10:00~16:30 ※入館は閉館30分前まで。最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
観覧料:一般 1000円 / 大学・高校生 500円 / 中学生以下無料
原作者による新作原画も。「美少女戦士セーラームーン ミュージアム」(六本木ミュージアム)
1990年代に社会現象を巻き起こし、いまも高い人気を誇る『美少女戦士セーラームーン』(原作:武内直子)。物語の舞台である麻布十番に隣接する六本木ミュージアムで、マンガ連載30周年を記念した大展覧会「美少女戦士セーラームーン
ミュージアム」の第3期が12月30日まで開催中だ。第2期のレポートはこちら。
本展は、今回の展覧会のために原作者・武内直子が描き下ろした新作原画や、初展示を含む貴重なカラー原画を3期(7月1日~9月4日、9月10日~11月6日、11月12日~12月30日)に分けて過去最大規模で展示してきた。
会場は「原画・原稿展示」を中心に、4.5×8メートルの大スクリーンとレーザーを用いた特殊効果で、美しいカラーイラストの世界に入り込む「没入型体験シアター」、新手法を駆使し、『美少女戦士セーラームーン』の名シーンをふり返る「ホログラム原稿展示」、そして90年代から最新作までのアニメ設定資料や貴重なグッズ、ミュージカルの衣裳などを公開する「コレクション展示」の4つのゾーンで構成されている。マンガ連載30周年の節目に特別な空間で、『美少女戦士セーラームーン』の世界を体験できる展覧会だ。
会期:2022年7月1日~12月30日
会場:六本木ミュージアム
住所:東京都港区六本木5-6-20
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
観覧料:一般 2200円 / 中高校生 1400円 / 小学生 800円 ※日時指定制