「町を食で盛り上げたい」 全国学校給食甲子園準優勝 埼玉・越生小の栄養教諭・小林洋介さん
小林さんが考案した献立は、本県の偉人にちなんで令和3年の埼玉県民の日(11月14日)の前後に約1カ月かけて出された給食メニューのひとつ。埼玉県深谷市出身の渋沢栄一と、栄一の見立て養子、渋沢平九郎にちなんだ給食だ。平九郎は新政府軍と旧幕府軍の一派「振武軍」が戦った飯能戦争で、越生町黒山で自決した、地元ゆかりの幕末志士だ。
平九郎が越生町と飯能市にまたがる顔振(かあぶり)峠を粘り強く走り抜ける姿をイメージし、越生産のゆずこしょうなどを使った納豆春巻「平九郎のかあぶり春巻」▽渋沢栄一が好んだ郷土料理を子供の好きなカレー味にした「武州カレー煮ぼうとう」▽地元農家で2年生が収穫したさつまいもを炊き込んだ「鈴木さん家のさつま黄金飯」▽越生町特産の梅が入った特製ドレッシングを使った「元気百梅サラダ」▽ときがわ町のみかん農家の無農薬みかん「大附みかん」―をそろえた。
越生町特産の梅やゆずは酸味の強さなどがあり苦手とする子供も多いが、小林さんは「少しずついろいろな料理に入れていくと、だんだんおいしいと感じ、地元のものを好きになっていく」と地場産のものを使った献立作りに取り組んできた。
最初に勤めた入間市の特養ホーム運営企業の社是が「誰にでも喜ばれるよう最善を尽くす」で、栄養教諭となった後も「誰にでも喜ばれる給食を」ということを信条としてきた。栄養教諭として最初に勤務した名栗村(現飯能市)では、地元の猟友会が捕まえたイノシシの肉などジビエも扱った。近年は、サッカーW杯や五輪など、あらゆるテーマを給食に設定。昨年大ヒットした映画「シン・ウルトラマン」がテーマの給食では、教員もウルトラマンの防衛隊風の衣装を着用して盛り上げるなど、子供たちが残さず食べるように学校や地域を挙げて給食をもり立てているという。
学校給食甲子園については、道具選びや1時間以内での6人分の調理と後片付け、衛生管理まで求められる難しさがあるが、今後も「応募するからには決勝大会まで行く献立を」と見据える。一方で、「子供や地域の人に喜んでもらい、町を食で盛り上げたい。世の中が給食を通してよくなっていくよう、献立を社会全体で共有できるようになれば」との夢も描いている。(兼松康)