大平龍一個展「SYNDROME」開催中@NANZUKA
大平龍一は1982年生まれ、東京都出身千葉育ち。山形県の鶴岡アートフォーラムにて個展「ぼうけんやろう」(2012)、世界遺産上賀茂神社で開催された「よりしろプロジェクト」における大型彫刻作品「TONGARIMARU」の展示・奉納(2013)など、多くの展覧会やプロジェクトを通し、さまざまなかたちで作品を発表している。
木材を使って作品を制作する彫刻家である大平。美術品に限らず、生活の道具や住居の基本要素として欠かせない素材である木材本来の特性に立ち返り、人間による理由のない創造性に基づき、「意味の定まらない」創造物を制作している。
本展では、合体ロボット的に擬人化したパイナップルのアバターとでも呼ぶべき大型の木彫作品を中心に発表。「Rhizome(地下茎)」と大平が称する本作品は、6本指、天狗、壺、大平の子どもが描いた絵をイメージソースにした鳥、象、あるいは男性器を連想させる矢印、改造車といったものが階層的に積み重なって構成された。
このほかに、悪魔的に美しい人物の顔を彫り込んだ巨大なクスの丸太スピーカー、大平の自家発電的創造を集めて並べたキャビネット作品、そしてさまざまな姿かたちのパイナップルたちを一堂に会して展示。中でもパイナップルは、大平を最も熱中させるモチーフなのだといい、「なぜか今この時代に、青くて逆さまのパイナップルをどうしても作らなければいけないという使命感を持っている。その理由はまだ言語化することができていない。それが解るまで?いや、正解を見つけようとしているのではない。私は不可能な行為としてパイナップルを作り続けるときに幸福に包まれる」と述べている。
徹底的に自分の好きなものを創作する大平の態度からは、アートが“意味の創造”でなければいけないとする宿命への柔らかな抵抗とも捉えることができる。パイナップル、改造車、金のチェーン、壺、チェリー、ダイヤル式電話など、互いに関連性も意味も持たないモノたちが、大平の理由のない愛着という唯一の共通項において作品化さされる。
同時に会場内2Fでは、谷口真人の新作個展「Where is your ♡?」も開催中だ。こちらもお見逃しなく。
Text:Akane Naniwa