【大人が行きたい山梨旅行】巨大なアートの実験的施設。北杜市「ガスボン メタボリズム」へ
現代アートとは、何なのか?どんな視点で、どんな価値を見出せばよいのか──“頭でっかち”な大人となった今、つい理論で立ち向かおうとしてしまう。だが、圧倒的な体積や物質的な存在を超えたアートを前にすると、言葉による理解は必要ないのだと気づく。「瞬間的にわからなくても、個人的な体験を重ねて自分の視座とアティチュードで楽しめたら十分です」と語るのは、「GASBON METABOLISM」のオーナー・西野慎二郎さんだ。ここは国内外のアーティストやクリエイターが作品の制作やメンテナンスをしながら長期滞在できるレジデンシーであり、作品を保管・展示するスペースでもあり、購入可能な作品も扱うギャラリーでもある。クリエイティブの多目的施設をコンセプトに据え、巨大なアートの実験的な施設として2022年8月にオープンした。
西野さんがアートビジネスに関わったのは、大学卒業後にソフトウェア/IT業界でクリエイティブ知財のライセンスに携わったことに始まる。ファインアートと商業アートのヒエラルキーに疑問を感じたことから、若手のアーティストにとってキャリアの可能性を広げるために1996年にアート関連の出版レーベル「GAS BOOK」を立ち上げる。その10年後には、リアルに作品を展示できる場として西麻布にギャラリー「CALM&PUNKGALLERY」を開設。
多角的にアートを見つめてきた西野さんが次に目指したのが、アーティストのモチベーションを高める刺激的な場を企てることだった。巨大なスタジオをアーティストに解放することで、将来持つべき大きなアトリエや大型作品のイメージを抱いて欲しいという願いが込められている。広大な敷地では複数のアーティストが同時に創作することも可能。初対面のアーティストが互いの作品を設営する時間を共有することで、インスタレーションとしての価値を生み出す「出張モノローグス」というエリアも企画。さらに、若手だけに限らずベテランのアーティストと時空を共有し、アーティスト同士の創作の芽を育む場としても注目を集めている。