香港アートマーケットの光と影。アートバーゼル香港2023
渡航制限がない3年ぶりのアートフェア開催となったアートバーゼル香港。2020年はオンラインでの開催を余儀なくされ、過去2年ともリモートで参加をするギャラリーも多かった。
香港では政治的な混乱を巡って欧米資本の企業の撤退がいくつか報じられてきたことや、昨年9月にFrieze Seoulが初開催して活況だったことで、日本のギャラリー関係者からも「今後のアジアのマーケットの中心は韓国・ソウルに移るのでは」、「今年が香港への出展は最後になるのかも」と囁かれてきた。
ところが蓋を開けてみると、M+の開館も相まって、多数の出展者、世界各地からのコレクター、キュレーターの来場があり大いに盛況だった。3月21日から25日までの5日間という短い喧騒の日々は幕を閉じた。最終的に177軒のギャラリーが出展し、昨年より47も増加、日本からも30軒以上が出展した。フェアのクロージング・レポートでは、ガゴシアンのシニア・ディレクターのニック・シムノヴィッチ、Take Ninagawaの蜷川敦子らもセールスがプレビューから好調だったとコメントしているし、日本のいくつかのギャラリーも初日、2日目からホクホク顔だった。わずか5日間だけでの86000人を超える来場者や、好調な売上――そこには香港がソウルに対抗せねばならない危機感、政治的な緊張からのアートマーケットの萎縮傾向に対して内外からの強い期待が働いたことが垣間見える。
活況に浮かれて危うく足元を掬われそうなこともあった。フェアを歩き回りながらこのツイートを現地から投稿した。すると「このツイートは削除されました」、と表示されるのだ。
はじめは自分で消してしまったか、Twitterそのものの不具合かと東京のスタッフに確認したが、日本からは問題なく表示されるという。たしかに日本からのVPNを介すると正常に表示される。はたと気づいた、2020年7月、香港にもついにグレートファイアウォール(通称:金盾)が導入されたのだった。
どのキーワードが引っかかったのかは想像に難くない。
メディアに対してこうした「監視」によって取材を萎縮させるには効果は十分だ。すでに香港の新聞やネットメディアも廃刊に追い込まれている。表現する側においては言うまでもないだろう。