あなたの知らないツタンカーメン、無名の像が表紙を飾るまで
バニーニ氏は、デジタル写真が普及し始めて間もないころにエジプトでの仕事を始めた。古代の遺物の撮影で目指しているのは、見る人の感情を喚起し、その歴史的な重要性を保存すること。今回の撮影プロジェクトに参加したのも、そうした背景があるからだ。
ツタンカーメンの墓の副葬品は、間もなく開館するギザの大エジプト博物館(GEM)に展示される。ここでの撮影は新たなチャレンジだった。この博物館には大きな窓や様々な遺物からの反射があって、光の当たり具合をコントロールするのが難しい。
そこでバニーニ氏は像の周囲に布を垂らし、小さなスタジオを作ることで不要な光を遮った。さらに、撮影後の編集作業で光の具合を調整した。
「撮影後の編集で、明るい部分や暗い部分を変えることができます」と氏は説明する。「毎回、素材ではなく、写真上で光の調整を行います」
バニーニ氏は、撮影時に生まれた感情を読者が感じてくれることを期待する。
「どの写真も、私の作品であるだけでなく、人生の一瞬でもあります。それが人に伝わらないのなら、写真を撮る意味がありません」
表紙を検討する場に写真家が編集部に提出したのは、この見張り像の写真だった。そして、わかりやすい黄金のマスクを差し置いて、知名度の低い遺物を撮ったこの写真が選ばれた。
一つの作品に取り組む際、バニーニ氏はさまざまな照明技術を駆使して複数の写真を撮影する。その後、編集作業でこれらを重ね、最終的に、美しく照らされた写真を作り出す。今回の仕事では、見張りの像1体につき48枚ほどの写真を撮り、これを重ね合わせて表紙の写真を作成した。同様に、黄金のマスクについては約160枚の写真を撮った。
バニーニ氏によれば、デジタル写真の撮影とは大部分が撮影後の編集作業であり、それが遺物を記録する最良の方法であるという。
「写真を撮りっぱなしにすることはありません」と言う。「編集の可能性を最大限に生かして初めて、このような画像を得ることができます」