河合塾のアドバイス これからの大学選びは「未来の自分選び」の時代に
23年度の18歳人口は前年度より2万人以上減少しているものの、国公立大前期試験志望者は前年比99%を維持しました。理系では医学科(対前年比106%)、歯学科(同112%)が増加した一方、工学部(同96%)は志望者が減少し、理系生の資格系学部志向が伺えます。文系では就職直結のイメージが強い経済・経営・商学部系(同104%)が増加しています。
私立大受験者は対前年比97%でやや減少傾向です。理系では国公立大同様、医学科(同105%)の他、獣医学科(同126%)の志望者が増加しました。私立大全体としては国公立大同様、理系は資格系学部への志望シフト、文系では就職直結イメージがある経済系学部に志望者が集まる傾向がありました。
大学は18歳人口減少と逆行するように1990年代から約30年で300校近く増え、入学定員も大幅に増加してきました。大学の受験倍率は下がり、「全入時代の到来か」といわれる現在、一部例外を除いて大学入試は次第に易化する傾向にあります。その一方、時代の変貌とともに社会が人材に求める能力は変化しています。国は、成長分野の人材育成に向け、大学には次世代トレンドを見極めた学部設立を働きかけるなど新たな改革を求めています。
2023年度は「情報・データサイエンス系学部」の新設が多数あり、一橋大、名古屋市立大、和歌山大などの国公立大の他、私立大では10校を超えています。また、これまでの学部領域とは異なる文理融合型の新たな学部が多数設立されていることも目立ちます。東京工業大は女子枠を設けた推薦型選抜を実施し、女子の理系分野の社会進出を創出する先駆けの取り組みとして注目されました。社会情勢の変化は大学を取り巻く環境をも変化させているのです。
これからの社会は新型コロナウイルス禍による過去3年の経済停滞から脱却すべく、大きく変化するはずです。さらに国主導の大学改革は、単純な資格系志向だけではない新たなトレンドを生み出すでしょう。
25年の「新課程入試」を前に、現行課程最後となる24年度入試がいよいよ始まります。受験生は未来の自分を作り上げるつもりで学習をスタートし、入試難度だけではなく、将来の社会のあり方を見極めた新時代の大学選びがますます重要になるといえます。これからの「大学選び」は、まさに「未来の自分選び」に直結する時代になろうとしているのです。
(河合塾 近畿地区医学科進学情報センター長 山口 和彦)
【執筆者プロフィール】
河合塾入職後、長年第一線で受験生の指導を行う。医学科志望者だけでなく、東大・京大志望から私立大志望まで幅広い生徒を担当。指導した生徒は延べ3000人を超える。2016年から近畿地区医学科進学情報センター長として、近畿地区の全校舎の医学科受験指導を統括。河合塾を代表する医学科受験指導のプロフェッショナル。