歌で伝える原爆の悲しみ…投下10年後の句集「広島」に曲、ソプラノ歌手「記憶次代につなぐ」
句集は、広島の複数の俳句結社が原爆体験の句を公募し、1955年8月6日に刊行。市民のほか、中村草田男や原民喜ら著名な文学者の句を含め、545人の1521句が掲載された。広くは出回っておらず、知る人ぞ知る句集だったという。
編集委員だった男性の遺族が昨夏、広島県内の自宅で句集500冊を発見。一部が俳句団体に寄贈され、注目が集まった。入手した俳句結社「里俳句会」(兵庫県尼崎市)では、50歳以下の同人が100句の選定や随想執筆を担い、同人誌で「総力特集」を掲載。同人の一人が、俳人でもある小暮さんだ。
<肌脱ぎつお母さん熱いと言ひ遺す><末期の語 みな「母」とのみ 火の十里><蝉鳴くな正信ちゃんを思い出す>
東京で生まれ育ち、プロのオペラ歌手として活躍する小暮さんは、広島を訪れたことはなかったが、ストレートな表現に圧倒され、戦争の恐ろしさを感じた。「シンプルだからこそ伝わるものがある。とにかく伝えたいと思った」。声楽家としてできることを考え、思いついたのが「朗読モノオペラ」だった。
自ら選んだ約30の句に音楽をつけ、ピアノの演奏やセリフを交えながら、一人芝居のように歌う。昨年12月には広島を訪問し、90歳代の女性被爆者から体験を聞いて、想像を膨らませた。
「広島」の「おわりに」には、句集を「一つの『開始』」とした上で「今後、第二第三の新しい仕事が、同じ目的のもとに展開されねばならぬ」と記されている。小暮さんは「今回の公演が『新しい仕事』の一つとなり、戦争の記憶を次世代につなぐことになれば」と力を込めた。
公演は、広島で8月3日、神戸で4日、東京で26日に行われる。