知られざる「東京湾アクアライン」の裏側 海底トンネルを支える“職人”たちを追った写真家・山崎エリナ〈dot.〉
千葉県木更津市と川崎市を結ぶ全長15.1キロの東京湾アクアラインは2022年12月、開通から25年を迎えた。
山崎エリナさんは21年夏から1年以上にわたってこの道路を守る人々をカメラで追い、写真集『アクアライン 知られざる姿』(グッドブックス)を出版した。
「今、アクアラインの通行量はとても増えています。なので、開通したころよりもメンテナンスにかかる費用や技術者も増えているそうです」
今回、山崎さんに撮影を依頼した「東京湾横断道路」は、アクアラインの建設と管理を行う会社として1986年に設立された。
アクアラインの設置は世界最大級の海洋土木工事で、調査に約20年、建設に約10年を要した。特に全長9.6キロの海底トンネルの掘削には最先端の技術とノウハウが投入されただけでなく、数多くの工法が実用化され、「土木のアポロ計画」と呼ばれた。
ところが97年の開通当初、通行量は平均約1万台/日と、予測の約2万5000台を大きく下回った。総事業費約1.4兆円の大型プロジェクトだっただけに見通しの甘さは強い批判を浴びた。その後、通行料金の引き下げ効果もあり、約4万8000台にまで増加した(21年度)。渋滞も珍しくない。
「土日の撮影のときは木更津から川崎に向かう帰りの道が渋滞して大変でした。空いているときはあっという間なんですが、渋滞に巻き込まれると、もう待てど暮らせど全然進まないみたいな」
■アリの巣のような空間
通行量が激増すると、路面や橋、トンネルの損傷も激しくなる。そのため、こまめなメンテナンスが欠かせない。
山崎さんの写真集は、メンテナンスという視点を通して、私たちが目にする場所だけでなく、アクアラインの舞台裏まで見せてくれる。その一つが海底トンネル内に設けられた緊急避難通路だ。交通事故や火災が発生した際、人々の命を守る重要な施設である。
撮影の拠点となった東京湾横断道路アクアライン事業所は千葉県側の木更津金田本線料金所のすぐとなりにある。
料金所から全長4.4キロのアクアブリッジを渡ると、海上に設けられた海ほたるパーキングエリアに着く。ここに緊急避難通路の出入り口がある。
「車1台が通れる幅の通路です。移動に自転車を使う人もいらっしゃるそうなんですが、基本的に車を使って防災設備などの点検作業を行います」