「ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室」(DIC川村記念美術館)レポート。教育者の側面にも焦点を当てる日本初回顧展
1920年にバウハウスに入学したジョセフ・アルバースは、その能力を認められ25年にマイスター(親方)となり、教育者としての道を歩み始める。33年にナチスの圧力になって閉校するまで同校で教えたアルバースは、バウハウスにもっとも長く所属した人物だ。
本展の1章「バウハウスー素材の経済性」では、のちの抽象表現からは意外に感じられる若き日の自画像から、ガラスを用いた作品、家具など初期の作品を展示。
また造形の基礎教育を担当し、「素材の扱いを学ぶこと」を重視したアルバースの考えをよく示す、紙を用いた演習に関する展示もある。亀山学芸員は以下のように説明する。
「彼のいちばん有名な授業として、1枚の紙から何かを作るというものがある。学生が船や城といった具体的なものを制作すると、それはあまり良くないとアルバースは言う。なぜかというと、それらは紙ではなくても作れるものだから、紙の特性を活かしたとはならない、と。そのときにアルバースが評価したものは、紙を折りたたんで立ち上げ、強度を高めたものなどでした。アルバースは『2足す2を5にする』べきだと言っています。素材の「経済性」、つまり最小の素材や加工によって最大の効果を生み出すことの重要性を説きました」