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なにが赤裸々
2023-06-09
なにが赤裸々

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『わたしを空腹にしないほうがいい』から5年、6月14日に新たに『桃を煮るひと』を上梓されたくどうれいんさん。これまでに多くのエッセイを書き、まっすぐに文章へ向き合ってきたくどうさんに、エッセイを書くことについて、ご寄稿いただきました。
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 『桃を煮るひと』
衝撃のデビュー作『わたしを空腹にしないほうがいい』から5年。小説、エッセイ、絵本、児童書、歌集…多方面で活躍する気鋭の作家が、満を持して、2作目の「食エッセイ集」を解禁。日経新聞「プロムナード」(2022年7月~12月)に掲載されたエッセイに、書き下ろしをたっぷり加えた、珠玉の41編。
 不幸じゃなくても、赤裸々じゃなくても、エッセイは書ける。

 わたしはもう五年近く、そう念じるようにしてエッセイを書いている気がする。

 エッセイ、随筆、と意識して書くようになったのは、高校で文芸部に所属してからのことだ。しかし、小学生のころからわたしは「作文コンクール」と言われるようなものに熱心に取り組んでいた。

 小学生のわたしは、いまよりずっと目つきが悪かった。日焼けして肌が浅黒く、しかし運動はからきしできず、ピアノの教室もすぐにやめてしまい、だからといって家にゲーム機があるわけでもない。漫画がそんなに好きでもないから絵を描くのも得意ではない。勉強だって、田舎の小学校の中ではできるほうでも、わたしよりできる子は何人もいる。

 勉強は、ふつう。運動は、ピアノは、絵は、ゲームは、できない。そういうわたしは学級委員長であることだけが自分の誇りであるような生徒だった。「男子、そこ、ホウキちゃんとやって!」と言い、先生に褒められることだけが、自分が認められたような気がしていた。先生の手伝いを率先してやって、みんなが引き受けたがらない役割や仕事を引き受けて、そうして「みんながしないこと」をする自分が特別だと信じていた。そういう子だった。

 「ちょっと残って書いてみない?」

 あれは小学二年生くらいだろうか。夏休み前の終業式に先生からそう声を掛けられたとき、だから、とてもうれしかった。国語の宿題で出した作文を、コンクールに出すために少し直さないかと言われたのだ。ほかの子はたぶん、はやく帰りたかったんだと思う。わたしの担任の先生は本当にいい先生だった。

 わたしの作文がよい作文だったからそう声を掛けてくれたのか、保育園から既に友人関係が構築されている小さな小学校に、入学直前に越してきて馴染めずにいるわたしを気にかけてくれていたのかは定かではない。けれど、とにかくあの、暑い夏の教室で、先生とふたりきりで向かい合って原稿用紙にまとまるくんを走らせては鉛筆で書き足す。あのとき、はじめてわたしは本当に特別になった気がした。

 そうして直して出した作文が入賞した。たしか佳作とか、そのくらいだったと思う。小さな村の作文コンクールはそもそも競争率が低いのに、それでも一位は取れなかった。昔からわたしは、とにかくとことん作文で一位が取れない人間なのだ。

 しかし、そんなことを当時はまったく気にしていなかった。最優秀賞も入賞も、ひとしく宝物だった。母も祖父母も、賞状を持って帰るととても褒めてくれた。お寿司食べようか、というくらい喜んでくれた。「ああ、わたしは作文だ。わたしは作文が得意。もっと作文が得意になりたい」そればかり思っていた。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/aaa0ad8305f7af59e5915e46d727f90f7f97ad97

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