桜井信一の攻める中学受験 「通塾すればするほど復習ができない」…誰もが悩む中学受験スパイラル
間違っても「最難関狙ってみましょうよ!」とは言わないのです。これはあとでクレームになることを恐れているのではありません。中学受験はクレームの火種だらけですから塾の先生もいちいちそんなことを恐れていません。
では、なぜ希望を持たせてくれないのか? 頑張るのはまだ小学生。ほとんどの子が長期にわたり頑張れません。数ヶ月どころか1カ月も頑張れないことを先生たちはよく知っているのです。
勉強は出来る子だけが楽しいゲームです。出来ない子には苦行でしかない。1カ月耐えることはなかなか難しいのです。この苦行をゲームに変えるには問題点が広すぎるのです。本当は解決できるはずなのです。しかし環境がそうさせてくれません。
塾の月謝を考えると、週に3回も4回も通わせないと面倒見が良いとは言えないし、保護者からするとそれくらいは授業がないと割に合わないと思うでしょう。さらに、塾のない日は課題がある。「いつ休むの?」と思ったらそもそも中学受験に向いていません。「いつ復習するの?」と気付く親だけが、苦行から抜け出すきっかけを見つけるのです。
週に3回4回の通塾、それ授業か演習なんです。さっと理解できることもあればじっくり考えたいときもある。いや、理解できるときは簡単な問題なだけで、公開テストで使える知識ではないでしょう。
さらに言えば、「理解した」と「解き方を覚えた」との違いがわかっている小学生は少ない。解き方を覚えただけだとすると、それいつまで覚えていられるでしょう。多分、公開テストの頃には曖昧ですよね。1年前に習った曖昧な相当算、相似な図形、さて、いつ復習するのでしょうか。
履修範囲だから公開テストには出題される可能性があるのに復習する時間なんてないはず。同じ単元を何度も習うスパイラル学習だから安心と思っている親は、塾のホームページしか見ていないでしょう。
一度習った相当算と相似な図形が次に顔を出す時は、基礎を完全に把握している子だけしか理解できません。パワーアップ相当算とクモの巣のように線が引かれた相似な図形になっているのです。これではさらに出来なくなる。やる気もなくなる。そう、悪循環なのです。
なぜか中学受験界では「スパイラル」を良い意味で捉えていますが、とんでもない。身近なところでスパイラルというと、「デフレスパイラル」のように悪い意味で使われています。こんな印象の悪い言葉を広告に使ってくる中学受験塾のふてぶてしさに呆れてしまいますが、それを良い意味ですっと受け止める保護者たちにも感心してしまいます。
もう一度整理すると、中学受験は最初からやり直さないと次へ進めない。しかし、通塾で振り返ると時間がない。この悪循環、言い換えると中学受験スパイラル。どう軌道修正するのか? どう攻めるのか。
攻めるためにはまず問題点を把握することが必要ですから、今回は「通塾すればするほど復習ができない」「でも休めない」ここまでをおさえておきたいと思います。そして、平均の子でも難関中学を狙えるということを広く知っていただきたいと思っています。
私は塾の先生と違って「そこは現実的ではありません」とは言いません。辿り着くまでのそのすべてを、教える側と学ぶ側の両面から知っていますから。