今年も『マツモト建築芸術祭』開催中! 新旧の建築をアートで楽しむ。
2年連続参加となる昭和3年築の建物〈下町会館〉(旧青柳化粧品店)に、今年初参加の彫刻家である青木悠太朗の作品が展示された。昨年はアーティストの土屋信子による宇宙指向の作品が並んだ2階の室内が、青木の異なる空気感で満たされている。
かつて滞在していたメキシコシティでの体験をカタチにした作品など、さまざまなスケールの木彫で構成された空間。作品のひとつは、松本に住む母親の友人から毎年送られてくるたくさんの贈り物と、それを巡るやりとりをテーマにしたもので、タイトルはずばり《マツモト》。これらの作品はすべて、「言語化する前の感情をカタチにしているようなところがあります」と青木は話す。
青木を含め、今回の芸術祭には初参加の作家が13人いて、新たに会場となった建築物も9か所ある。他方で2年連続参加の作家および建物も多く、「去年と同じ会場を新たなアーティストの作品が彩り、去年と同じ作家が新たな会場を彩ると、それぞれ見え方が全然変わる。そういうことを体験してほしいから、あえて連続参加枠を設けています」と、芸術祭総合ディレクターのおおうちおさむは話す。そうした ”定点観測” 的な視点をおもしろがってもらうべく、初期構想段階から既に継続開催を意識していたそうだ。
現在は〈ミナ ペルホネン松本〉などの店が軒を連ねる六九(ろっく)町。信州松本藩による享保9年刊の藩撰地誌『信府統記』によれば、この変わった町名は、かつて厩(うまや)があり54頭(6×9)の馬がいたことに由来するとかで、しゃれている。そんな町の一角で半ば廃墟となっていた店舗が今回新たに選ばれ、ともに初参加作家である2人の作品と組み合わされた。