「作家のチャンス広げた」天神のギャラリー、惜しまれつつ閉廊へ
ギャラリーは昭和通り沿いのビル3階を改装し、2003年2月にオープンした。当時65歳だった久保田さんは、アートに関する深い知識はなかったが、「芸術が好きで、作家と来場した人たちが交流する場をつくりたい」と一念発起。コンセプトに「アートは心のビタミン」を掲げた。
プロや会社勤務の傍ら創作する人や学生など週ごとに幅広い世代がギャラリーを借り、絵画や写真、工芸、アクセサリーなどさまざまな作品を展示してきた。ギャラリー奥にある小上がりの空間ではコンサートも開かれ、初めて作品展を開く若い作家たちも多かった。久保田さんは「できることは協力する。まずはやってみたら」と若者の背中を押し続けてきた。
天神地区では近年、運営が難しくなったギャラリーの閉廊が相次ぐ。久保田さんは「どこのギャラリーも大変だけど、頑張らないと」と続けてきたが、80代を迎え体力的な限界も感じていた。コロナ禍の影響もあり、年20~30回あった作品展が半減。閉廊することを決意したという。
作家たちからは惜別の声が上がっている。コンピューターグラフィックス(CG)の作品などを手がける市内在住のアーティスト、Yorie(ヨリエ)さんは、07年から同ギャラリーで個展を開いてきた。「作家たちのチャンスを広げた久保田さんの功績は大きく、私も助けられた。変化に富んだ展示をできるギャラリーだっただけに、なくなるのはさびしい」と残念がる。
27~31日は、開廊当初からグループ展を開いてきた画家の安岡雅峰さんら有志約10人が作品展「感謝祭」を開く。久保田さんは「皆さんのおかげで老後が豊かになった。楽しい思い出しかない」と感慨深げに語った。ギャラリー(090・5481・9150)。【山崎あずさ】