アーティゾン美術館が2023年度のスケジュールを発表。ダムタイプのヴェネチア帰国展、山口晃、マリー・ローランサンまで
まず、2023年2月には「ダムタイプ|2022:
remap」(2023年2月25日~5月14日)が開幕する。第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示に選出された、日本のアート・コレクティブの先駆け的な存在であるダムタイプ。1984年の結成時から一貫して、身体とテクノロジーの関係を独自な方法で舞台作品やインスタレーションに織り込んできた。
ヴェネチアでは坂本龍一を新たなメンバーに迎え、ヴェネチアで新作《2022》を発表。「ポスト・トゥルース」時代におけるコミュニケーションの方法や世界を知覚する方法について思考をうながす本作を、帰国展として再構成して紹介する。
同じく2月からはじまるのが「アートを楽しむ
─見る、感じる、学ぶ」(2023年2月25日~5月14日)だ。これまで、アーティゾン美術館は様々なラーニングプログラムを提供してきたが、こうしたプログラムの成果をもとに、所蔵作品の中から厳選した作品を、ひと味違った方法で展示する本展。内容は「肖像画の世界へ──絵や彫刻の中の人になってみよう」「風景画への旅──描かれた景色を体感する」「印象派の世界を体感する──近代都市パリの日常風景」の3つのセクションで構成される。
6月からは「ABSTRACTION
抽象絵画の覚醒と展開」(2023年6月3日~8月20)を開催。19世紀末から第一次世界大戦が勃発するまでは、フランスが平和と豊かさを享受することができたベル・エポックの時代だった。芸術を生み出す活気と自由な雰囲気にも満ちあふれていたこの時代、フォーヴィスム、キュビスムなどの新しい美術が芽吹いて花咲き、やがて絵画表現の到達点のひとつとして抽象絵画の誕生を導いていく。その後、抽象絵画が20世紀の美術表現を主導することになり、現代美術の道筋をつくった。
この展覧会は、抽象絵画の発生の前後から、戦前戦後のフランス絵画を中心とした興隆の動向、戦後フランスの抽象表現主義、日本の実験工房や具体などを通して、抽象絵画のあゆみを展観するものとなる。
9月からは石橋財団コレクションと現代美術家が共演する展覧会「ジャム・セッション」の第4弾「石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ
サンサシオン」(2023年9月9日~11月19日)を開催。写実絵画やアカデミズム絵画といった前提となる歴史を持たないにもかかわらず、日本は「近代絵画」を輸入した。西欧の近代絵画と日本の近代絵画を蔵する石橋財団コレクションを前に、現代美術家・山口晃が「近代絵画とは何か」という問いに挑む。
同じく9月より開催されるのは「創造の現場 ー映画と写真による芸術家の記録」(2023
年9月9日~11月19日)。1953年、旧ブリヂストン美術館は開館の翌年に映画委員会を発足させた。1964年までの11年間に60人の芸術家を取材し、アトリエでの制作風景や日常の様子などを記録した17本の映画を制作している。また、近年の同館は戦後の現代美術の現場を記録し続けた写真家である安齊重男(1939~2020)のアーティスト記録写真も収集。本展は映画委員会が制作した貴重な美術映画と取材対象となった芸術家たちによる作品、そして安齊作品を紹介し、日本近現代美術の現場をアーカイブで伝える。
2023年度の最後を締めくくるのは「マリー・ローランサン ─時代を写す眼」(2023
年12月9日~2024年3月3日)だ。20世紀前半に活躍した女性画家、マリー・ローランサン(1883~1956)は、パリのアカデミー・アンベールで学び、キュビスムの画家として活動を開始。1914年にドイツ人男爵と結婚、ドイツ国籍となったため、第一次世界大戦がはじまるとフランス国外への亡命を余儀なくされた。1920年に離婚を決意してパリに戻ってくると、1921年の個展で成功を収める。第二次世界大戦勃発後もほとんどパリに暮らし、1956年に73歳で世を去るまで制作をつづけた。本展ではローランサンの画業を複数のテーマから紹介し、関連するほかの画家たちの作品と比較しつつ、その魅力を紹介する。
なお、年間を通じて、その潤沢なコレクションを紹介する「石橋財団コレクション選」も開催。また、特集コーナー展示にも注目したい。坂本繁二郎ら日本近代洋画家の手紙に焦点を当てた「画家の手紙」(2023年2月25日~5月14日)や、マティスやカサット、山下新太郎らの作品による「読書する女性たち」(2023
年9月9日~11月19日)、102 歳を迎えるいまも精力的に制作を続ける野見山暁治を紹介する「野見山暁治」(2023年12月9日~
2024年3月3日)などが予定されている。