近衛文麿旧邸「荻外荘」 グッズ収益で復元へ 杉並区が5種販売
区によると、荻外荘は築地本願寺を手がけた建築家の伊東忠太(1867~1954年)の設計で1927年、現在の同区荻窪2に建てられた。37年に近衛が私邸として譲り受け、45年12月に書斎で自決するまでの期間を過ごした。
グッズは5種類。メーカーと共同製作した「ペーパークラフト日本の史跡1/200 荻外荘」は復元図案を基に、広々とした庭園を望む荻外荘の姿を再現している。手ぬぐいや書類ケースなどの雑貨類は、オリエンタルな雰囲気の動物模様が入る。政府要人が膝を突き合わせた客間の壁紙に描かれた図柄という。いずれの商品も「建物の魅力に注目してほしい」との思いが込められている。
荻外荘は、政治の転換点となる重要な会議が数多く行われた場所として知られる。例えば、日独伊の連携強化など第2次内閣の基本方針を話し合った「荻窪会談」(40年7月)や、近衛が対米開戦回避を試みた「荻外荘会談」(41年10月)などだ。日本の政治史上、重要な場所として2016年には国の史跡に指定された。
区は14年2月、荻外荘の敷地と建物を遺族から約31億円で取得。戦後に豊島区の天理教東京教務支庁へ移築されていた客間や応接間も約3000万円で敷地内に戻し、近衛が住んでいた頃の姿に復元するプロジェクトを進めている。荻外荘を含めた一帯を史跡公園として整備し、24年12月からの一般公開を目指す。
公園整備に見込む工事費は総額で約11億5000万円。国や都の補助に加え、ふるさと納税を利用した寄付も活用する。寄付は4月末現在で約3900万円集まっており、区は今回のグッズ販売でさらなる周知につなげたい考えだ。
区都市整備部の星野剛志・荻外荘担当副参事は「歴史だけでなく建物や調度品の魅力、伊東の建築思想も楽しんでもらえる場所になる。グッズをきっかけに、多くの人に興味を持ってもらいたい」と期待を語った。
グッズは区役所中棟1階の「コミュかるショップ」で販売中。