『北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI』で、工芸がたどった旅を味わう。
『北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI』は北陸3県で開催されている芸術祭。北陸が誇る工芸と現代美術との新たな関係性を探るものだ。アートと工芸は異なるジャンルのものだと思われているけれど、「つくる」という意味では共通のものを持っている。工芸寄りのアプローチをとるアーティストや、現代アートの文脈で語られる工芸も増えてきた。
今回で3回目になる「GO FOR KOGEI」のテーマは「つくる-土地、くらし、祈りが織りなすもの」。アート・工芸の枠組みにかかわらず、真摯に素材と取り組み、手を動かしている作家たちの作品が並ぶ。会場は3つの県のそれぞれ歴史ある寺社仏閣だ。ここでは会場ごとに作品を紹介する。
富山県の〈勝興寺〉は文明3年(1471年)に創建された浄土真宗本願寺派の寺院。3万平方メートルもある広大な境内の建造物のうち、重要文化財である書院などに「GO FOR KOGEI」の作品が展示されている。
畳の上、赤い布に包まれる樫尾聡美のインスタレーションは、まるで胎内に入ったかのようなイメージだ。作者はこの作品を「人体の外にあって自分を揺らし続けるもの」だという。
「デジタルの時代になって、自分ってどこにあるんだろう? という気持ちになったときに、ここにあるよ、ということを教えてくれる」(樫尾)。
この作品にはところどころに小さな蝶や飛行機が現れる。樫尾は出産を経て、身体も人工物と同じように細かいパーツを組み合わせた機能的なものであることに気づいたという。
京都で藍染めを手がける福本潮子は台所に藍で染めた、幅7メートルの幔幕をかけた。井戸もある台所は〈勝興寺〉の中でも一段と広々とした空間だ。かつては今よりももっと多く使われていた幔幕は、「優雅な感じがして好きなんです」と福本はいう。