【今週見るべき展示会】瀬戸内国際芸術祭が開幕。アートな名店街、安藤忠雄の新ギャラリーも
3年に1度開かれる瀬戸内国際芸術祭が、今年も開幕した。この芸術祭は、瀬戸内海に浮かぶ12の島と香川県・高松、岡山県・宇野港周辺を舞台にした現代アートの祭典で、「海の復権」がテーマ。近代以降、交通網を含むインフラの整備・発展が「陸」を中心に進むなか、取り残されてきた瀬戸内の文化資源を、アートや建築の力で再発見することが趣旨のひとつだ。
実際、前回の『瀬戸内国際芸術祭2019』では100万人を超える人が訪れ、また『ナショナルジオグラフィック』や『ニューヨーク・タイムズ』などの海外メディアが、世界有数の訪れるべき地域として、この芸術祭を開催している瀬戸内海を取り上げた。総合ディレクターの北川フラムは「長らくホワイトキューブで展示されてきたような商品としてのアートとは異なる美術の力や意味が、この芸術祭を通じて発見されてきた。地域づくりのモデルにもなり、21世紀型とも言える美術の展開に寄与してきた」と話す。
瀬戸内の歴史や地理を反映させたサイトスペシフィックな作品の鑑賞、島巡り、現地の人との交流、ローカルな食と、多様な体験ができる芸術祭だが、地域づくりとして行政の地域計画と合わせたプロジェクトが展開されているのも特筆すべき点だ。
たとえば「女木島名店街」。周辺の島々では移住者を中心に人口が増えているのに対し、近年、女木島は減少傾向にある。そこで芸術祭の参加アーティストに空き家などを利用してユニークな商店の制作を依頼。社会生活の基盤となるお店をつくることで、人々の定住への道筋を探ろうとするプロジェクトだ。
すでに2019年、原倫太郎+原游の卓球テーマパーク《ピンポン・シー》、自身ではなく海を見ながらヘアカットをしてもらえる宮永愛子の《ヘアサロン 寿》、洗濯機が回る映像作品を組み合わせたレアンドロ・エルリッヒの《ランドリー》など、来島者も島民も利用できる“アートなお店”が完成しているが、今年はさらに新たな作家によるショップが増え、名店街が充実。見どころのひとつになっている。